知的財産制度は、一定期間の独占権を権利者に付与することにより、権利者が当該独占権を直接に使用するか、ライセンス契約を通じてライセンス料金を受取るなどの方式で経済利益を獲得する。これにより、権利者の研究開発意欲を奨励、刺激し、技術革新の促進及び消費者福利の増進を実現する。
しかし、権利者は、経済利益を最大化に実現できるように、常に他の事業者がこれを利用することを拒絶したり、利用することを許諾するに当たってライセンシーの研究開発活動、生産活動、販売活動その他の事業活動を制限したりする行為(以下「技術の利用に係る制限行為」という)を行い、その態様や内容いかんによっては、技術や製品をめぐる競争、ひいては技術革新の促進及び消費者福利の増進に悪影響を及ぼす場合がある。それゆえ、知的財産分野における独禁法の適用問題は生じる。
そして、ライセンス契約を締結する際、どこまでライセンシーの「技術の利用に係る制限行為」を定めれば独禁法上に禁止されないのか問題になる。これを明確にしておくため、今日の主要先進国には、詳細なガイドラインが公布されている。例えば、米国の「知的財産ライセンスに関する反トラストガイドライン」、EUの「技術移転一括適用免除規則」、日本の「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」が挙げられる。そのうち、EUの立法は、中国立法に参考される部分が多いと思われる。
中国国家工商管理総局は、2012年8月頃、「関与知識産権領域反壟断執法的指南」意見募集第5稿、2013年4月頃、再び「工商行政管理機関禁止濫用知識産権排除、限制競争行為的規定」意見募集稿を公開した。その内容からみて、重複な部分が多いが、後者が前者と比べ、やや不十分かつ曖昧な条文内容を設けられる。これは前者が一部の企業集団の利益を触れ、立法上の障害を短時間に避けられないため、まず後者を今年に実施してみるというような見解が見られる。いずれにしても、最終いずれかの文書を採用したとしても、その核心な制限内容及び立法趣旨に変わらないと考える。
本稿では、まず現行規定を整理し、その後、中国主要な立法参考であるEU「技術移転一括適用免除規則」を参照しうえ、上記意見募集稿の核心内容を解説する。これにより、企業側、特にライセンサーが今後、ライセンス契約を締結する際の独禁法上の参考になればよい。