三菱ケミカルホールディングスは、化学工業の材料の生産を中心とする企業で、2012年のフォーチュン500では252位にランクインした。年間売上は310億ドルに、従業員数は5万5000人に達する。
小林氏は三菱ケミカルを経営するほか、石油化学工業協会会長、安倍内閣の経済財政諮問会議の民間議員として、日本の石油化学および国家経済戦略の政策の制定に参与している。
■日本化学工業企業の直面する課題
人民網:アベノミクスの実施から1年後、日本の平均株価が大幅に上がり、円相場が下落しました。企業は具体的な実益を感じていますか?
小林氏:内閣府はこのほど、企業の状況について調査を実施しました。その結果を見ると、業界によって状況が異なることが分かります。他社に原材料を提供する企業のうち、製鉄などの状況は良くなっていますが、化学工業の状況は良くないです。エネルギーを消費する事業の展開は、日本ではますます難しくなっています。例えば化学工業企業は、エネルギーを大量に消費しますが、原油価格の高騰や円安により収益が狭められています。日本の最大の問題は、エネルギーを自国で賄えないことで、企業がエネルギー価格の変化による影響を受けやすい点です。そのため円安によって、すべての企業が実益を得るわけではありません。
人民網:新しい環境の変化に対応するため、企業にとっては技術革新、新製品の開発の必要性が高まるのではないでしょうか?
小林氏:グローバル化により、国と国の間の境界線が失われています。企業はかつて国内で競争していましたが、今は国際市場で競争しなければなりません。世界を見ると、中国は巨大な生産能力を持ちます。中国は国際市場への進出後、それまでの企業の生産・経営方式を大きく変えました。国内を見ると、日本のかつての製造業は特に、技術を磨き、技術にこだわることを重視しました。しかしデータ化・モジュール化の生産が世界の主流になると、企業の生産方式に大きな変化が生じました。
現在は企業の技術革新が必要になっており、日本企業も革新的な製品・生産方法を必死に探し求めています。しかし世界市場での競争は、生産方法の競争でもあり、日本が10年をかけて見つけ出した革新的な製品・生産方法を、他国はすぐに学び、数年間で日本を追い抜く可能性があります。革新的な製品は見つけにくくなっていますが、他国が日本を追いかけるスピードは加速を続けています。世界の企業の先頭に立ち、先進性を維持することが難しくなっています。