投資協定の発効はこのように、中日韓の経済・貿易協力をさらに促進し、三者のFTA協議のプロセスを推進するものだが、その役割を過大評価することはできない。
第一に、中日韓投資協定の意義は、革新よりもむしろ統合にある。同協定には27条項と1議定書からなり、国際投資協定が通常含んでいるすべての重要内容を含んでいる。投資の定義や適用範囲、最恵国待遇、内国民待遇、関税、移転、租税、例外、紛争解決などがこれに含まれる。だが中日・日韓・中韓には二国間投資協定があり、それぞれ1989年・2003年・2007年に発効しており、上述の基本的な内容をすでに含んでいる。そのうち一部の内容は古くなり、修正が必要ではあった。投資者の利益の促進・保護という点から言えば、二国間の投資協定の内容を適切に修正するだけでよかった。だが中日韓投資協定は中日韓自由貿易区の交渉開始の前提であったため、中日韓政府は、最新の中韓投資協定を原本として状況の変化を取り入れ、従来の二国間投資協定を統合することを決めた。内国民待遇や最恵国待遇、知財権保護、公平公正原則などの条項は2007年に締結された中韓投資協定でいずれも規定されており、今回は知財権保護などの条項が強化されたにすぎない。この意味からは、中日韓投資協定は、従来の3つの二国間投資協定を統合したものであり、革新的な内容は乏しく、統合という意義が革新を上回っている。
第二に、中日韓投資協定の基準は十分に高いとは言えない。二国間投資協定の内容と形式は、国際投資の規模や方式、局面に影響されると同時に、国際投資の環境や法規、体制に制約される。長年の調整と改善によって、二国間投資協定は第4世代と言える段階に発展している。現段階の投資協定では、透明性やパブリックエンゲージメントがより強調され、労働者と環境の保護が強化されている。国有企業(国家主導型の経済体)の特殊待遇や自主革新政策がもたらすズレにはより厳格な規定が設けられている。技術購入と技術標準制定では、投資者に特定技術を購入するよう要求したり、特定技術を購入することを阻止したり、技術保有者または投資者の国籍に応じて優遇政策を取ったりすることを両国に禁じ、ホスト国の政府に技術標準の制定に相手国の投資者が参加することを許すよう求めている。参入前内国民待遇やネガティブリスト、競争中立政策などの原則は比較的新しく、中米間や中欧間で進められているBIT交渉でこうした原則に進展が見られている。だが今回の中日韓投資協定にはこうした高い標準は設けられていない。中国が近い将来、米国や欧州と高標準の二者間投資協定を締結すれば、中日韓投資協定の遅れは明らかとなり、さらに大きな調整と変更を迫られることとなる。
中日韓投資協定の発効はこのように、重要な意義を持つと同時に、今後に課題も残している。現在進められている中日韓FTA交渉では、投資関連内容をめぐる作業グループが特別に設けられ、三国間の投資をいかに促進するかの議論が熱く交わされている。中日韓の経済関係をさらに深めるためには、「ハイレベルの投資自由化」を含む中日韓自由貿易協定を早期に締結する必要がある。(文:倪月菊・中国社会科学院世界経済と政治研究所研究員)(編集MA)
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「人民網日本語版」2014年5月30日
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