インドのモディ首相が30日から5日間の日程で日本を訪問する。もともとは日本・インド両国の事柄であるはずのこの訪問だが、「中国に向けて強いシグナルを発した」とする見方が日本で相次いでいる。環球時報が伝えた。(文:竜興春・察哈爾(チャハル)学会研究員、西華師範大学准教授)
21世紀に入って以来、日本はそれまでのインド軽視政策を変更した。まず、インドへのハイレベル訪問が頻繁になり、対インドODA(政府開発援助)が増加した。2005年、インドは中国に代わり、日本のODAの最大の受け取り国となった。さらに日本政府は日本企業のインドでの投資を奨励し、レアアース開発などの分野で実質的な成果をあげている。
日本がインドに歩み寄る目的は数多いが、最も根本的な目的は「ますます自信をつけ、強硬的な態度を見せる中国に、インドと共に対抗する」ことだろう。アジアでは今、中日印の3強構造が形成されている。中国は日本・インドの両国とそれぞれ領土問題を抱えているが、日本とインドは歴史的な恨みや地縁・政治的な衝突がない。日本とインドが協力して中国に対峙することは、ごく自然な選択と言える。日本・インドの両国はちょうど中国の東西に位置し、客観的にも中国を「挟み撃ち」にすることができる。これが、日本がインドに接近する戦略的意図だ。米国のアジア太平洋リバランス戦略も、日本とインドの提携強化を後押しした。
しかし、インド政府の態度は非常に慎重だ。インドは今、日本との実質的関係を積極的に発展させている(海上での合同軍事演習、日印次官級「2+2」対話、ルック・イースト政策の中心に日本を置き、日本からの企業誘致・投資誘致に力を入れるなど)。しかし一方で、共に中国をけん制するという核心的な目標に関しては、日本はまだインドから満足できる回答を受け取っていない。インドは、中国けん制を目的とした日本の計画に距離を置いている。むしろ、インドは中国包囲・けん制の同盟に加入することは無いとし、インド・日本関係は中国を対象としたものではないと強調している。
日本はかつて、釣魚島(中国名・尖閣諸島)に関して日本の立場を支持するようインドに求めたことがあるが、インドは首を縦に振らなかった。
モディ首相の今回の訪日は、主にインドの利益を目的としたものだ。「発展」の目標を掲げて選挙に勝利したモディ首相は、外交は経済発展のためであると強調する。今回の訪日の主な任務は企業誘致・投資誘致だ。このほか、日本と民用原子力エネルギーに関する協定を結び、インドの原発市場により多くの競争者を招こうとしている。さらに、日本から水陸両用機を購入し、技術の譲渡、兵器の共同開発・生産について日本と協議し、インドの軍事力強化につなげたい考えだ。
モディ首相は、「経済発展こそが全ての問題を解決し、大国になるための基本」との見方を示している。インドが発展するためには米国・日本だけでなく、中国との協力も必要だ。中国の存在は、米日がインドを重視する主な原因となっている。モディ首相は、印米関係を動かす「てこ」として中国を活用することを打ち出した。同様に、日本との接近によって、中国との交渉での存在感を高めることができると考えられる。インドの国力・軍事力は中国に遠く及ばない。米日のために中国と対抗するのはインドの利益にそぐわない。モディ首相の日本訪問後、すぐに習近平主席がインドを訪問する。「日本とインドが共同で中国に対抗する」などという日本の幻想は、その後の習主席訪印と、中印友好協力の実現によってかき消されてしまうだろう。(編集SN)
「人民網日本語版」2014年9月1日