▽集団的自衛権の行使容認
今回の内閣改造の重要な目標は「集団的自衛権の行使容認」という政策をスムーズに採択し、着実に実施することだ。
今回の改造の時期をみると、これまでの首相とは異なり、自民党の役員人事と内閣改造を同じ日に行っており、前後のスケジュールが非常に緊密になっている。さらに、自民党の重要な役職である幹事長と政調会長の人選も意味深長だ。幹事長には前総裁の谷垣禎一氏が、政調会長には、右翼政治家として有名で、何度も靖国参拝を行っている稲田朋美氏が起用された。比較的「穏健派」の谷垣氏をナンバー2の幹事長とすれば、党内各派の利益や矛盾を処理するのに役立つ。これは安倍氏にとって、来年の総裁選再選に向けた布石であり、集団的自衛権の行使容認に関連する安全保障法の整備に向けた下準備だ。集団的自衛権の行使容認は自民党の「統一的見解」ではなく、党内にも慎重な意見が存在する。このため、「角を立てない」谷垣氏に慎重派をなだめる任務が任された。
一方の政調会長には、右翼政治家の稲田氏が起用された。ここからは、安倍氏が自身と同じ観点を持つ「盟友」を重用したということのほかに、稲田氏の右翼的特質を活かし、党内で右翼・保守的な政治家の影響力を拡大し、保守的な安全保障政策の採択に役立てようという目論みが伺える。
▽内閣改造後も問題は山積み
安倍氏は今回の内閣改造で、ライバルであった石破氏が長期政権にもたらすリスクを取り除いたが、全く問題が無くなったわけではない。安倍内閣がこれから直面する難題は数多い。今年10月と11月に行われる福島県と沖縄県の知事選挙、来年春の統一地方選挙、今年末の消費増税の決断(8%から10%へ)などは、安倍内閣の未来を占う重要なポイントとなる。特に膠着状態に陥った北東アジア外交をいかにして「氷解」させるかは、安倍内閣を試す大きな課題だ。
安倍内閣の支持率はすでに低下している。何とかして支持率を上げる方法を考えなければならない。しかし上述の難題にどうやって対応するかはまだ未知数だ。支持率を引き上げ、長期政権を実現するためには、真剣に考慮した上で、念入りに対応する必要がある。(文:厖中鵬・中国社会科学院日本研究所学者)(編集SN)
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「人民網日本語版」2014年9月5日