アメリカ合衆国通商代表部(USTR)は11日、中国が紡績品など多くの業界を対象に、数10億ドルに上る、不当な輸出補助金を実施しているとして、世界貿易機関(WTO)に提訴した。それに対して、中国の商務部(省)は12日、「遺憾」とし、WTOが定める手順に従って処理するとの立場を示した。環球時報が報じた。
ニューヨーク・タイムズの12日付の報道によると、USTRの代表フローマン氏が、米国政府を代表してWTOに正式に提訴した。米国政府は、「中国政府は『公共サービスプラットホーム』を立ち上げて、3年の間に、同プラットホームを利用している輸出企業に約10億ドルの補助金を出しているほか、モデル拠点を179カ所設置し、輸出企業にその他の補助金も提供した。1拠点当たり平均63万5千ドルの補助が出ている」と主張している。提訴を受けたのは、服装や繊維、金属など。「不公平な補助金制度により、米国の労働者や企業に損害がもたらされた」という。
これに対して、中国商務部条約法律司の責任者は、「中国は、米国の協議請求を受け取った。指摘されているモデル拠点は、中国が貿易発展の方法を転換し、対外貿易の健全で安定した発展を促進させるための、重要な政策。WTOの規定にも合致している」との立場を示している。
WTOの関連規定では、紛争を解決するために、まず今後60日の間に、二国間協議が実施されることになっている。それでも、問題が解決されない場合には、米国政府が、スイスのジュネーヴにあるWTO本部に仲裁を請求し、WTOが9カ月以内にその結果を出すことになる。もし、中国がWTOの貿易規定に反していると判断されれば、一定期間内に補助金政策を中止しなければならない。
その他、英ロイターの12日付報道によると、米国の貿易関連機関は、中国製を含む安価な輸入紙の調査を展開し、輸出補助金が提供されていないか確定させる計画という。提供が確認されれば、補助金の影響を相殺すべく、米国政府は輸入の非塗工紙を加税の対象にするという。
米国政府は近年、貿易の分野において中国を相手に何度も提訴をしている。WTOに提出された中米間の紛争24件のうち、15件は米国政府が提出した。米国国会が10日に発表した新議案には、「中国や日本の為替レート操作が認定された場合、米国はそれらの国からの輸入品に、懲罰的輸入税を科す」という項目が含まれている。
米「ウォール・ストリート・ジャーナル」は12日、「今回の提訴は米国が中国以外の12カ国と『環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)』を締結したいことと関係がある。オバマ大統領は、国会に対して、国際貿易交渉をめぐるさらに多くの権利を自身に授けるよう申請している。その権利が実現すれば、オバマ大統領はTPPの貿易交渉において、さらに多くの自主决定権を得ることになる。中国との貿易をめぐる、保護対策を講じることで、オバマ大統領は国会議員の支持を取り付けたいのだろう」と分析する記事を掲載した。
その他、「米国は現在、量的金融緩和政策を終了させ、金利を上げる準備をしている。一方の日本や欧洲などは、量的金融緩和政策を大々的に実施しており、中国も金利の引き下げを実行している。スイスの中央銀行も最近、基準利率を0からマイナス0.1%に引き下げ、2016年下半期までは利息を引き上げないとしている。これにより、全面的なドル高となり、一方その他の主要な貨幣は軒並み相対的価値が下がる。米国は、そのような状態が長期間続くと、輸出に深刻な損害が及ぶことを懸念している。そのため、他の国の対外貿易に圧力をかける方法を模索している」との分析もある。 (編集KN)
「人民網日本語版」2015年2月15日