日本の料理雑誌で初めて「料理研究家」という言葉を見た時、料理を研究している専門家のことだろうと思っていたが、後に、その多くが主婦で、一般家庭向けに普通の料理のレシピを紹介しているだけであることを知った。そして、なぜ普通の主婦が「研究家」と呼ばれているのかと不思議に感じるようになった。(文:徐航明。瞭望東方周刊掲載)
この疑問は、何年も後になってから解決した。
日本料理が世界中で、おいしく、健康的で、芸術的なものであると知られていることは、「料理研究家」や、その背後で全国民が料理を研究し、互いに切磋琢磨し、よいものを外へ発信するという大衆文化と密接な関係がある。
日本の「料理研究家」はプロの料理人ではなく、固定の職業に就いているとも限らず、その多くが料理研究を目標にしたアマチュアの料理人だ。もちろん、「料理研究家」のレベルもピンからキリまであり、料理を研究し、家庭向けの料理を紹介している人なら誰でも「料理研究家」と呼ぶことができる。しかし、料理本を出したり、テレビの料理番組に出たり、料理教室を開いたりして、収入を得る人だけが、社会で認められている「料理研究家」と言える。
「料理研究家」は日本の歴史における、ここ100年の社会の変遷を映し出していると言える。
「料理研究家」の誕生は、明治維新後の19世紀末にまで遡ることができ、日本に伝わった西洋料理をいかに日本の家庭料理になじませるかが、当時の多くの「料理研究家」の研究テーマだった。第二次世界大戦終了後の1950年代、高度経済成長に伴い、多くの女性が社会に出て働くようになり、時間をかけずに作れる「時短料理」の需要が高まった。そして、「料理研究家」らもそれに合わせたレシピを編み出してきた。近年になると、多くの人が栄養や健康を考えた料理に注目するようになり、それが「料理研究家」の新たなテーマとなっている。
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