【第10回】「どうして?」はダメ
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「日本人は『なぜ?』とか『どうして?』とかいう質問に対して、変な反応をしますね」
これは、最近教え子から言われたひと言だ。いやあ、ズシンと来た。おそらく、「どうしてそうしたの?」と言われた相手は、急に責められたように感じるのだろう。
「なぜ」や「どうして」を、相手の非を責める時に使ったことのある日本人は少なくないだろう。少なくとも、わたしはこれまで何度かしてきた。最初から意地悪く問い詰めたこともあるし、意地悪しようと意識してやったわけでもないのに、結果的に相手にそう思われてしまったこともある…。
以前、「女性の話はただ聞くだけで、解決策を出してはいけない」と書いたことがある。「どうして?」は、ロジックを理解するために使う聞き方。日本人男性は理屈好きだから、平気で「なぜ?」「どうして?」を使い、多くの女性に嫌われてしまう…。それに比べ、中国人男性は賢い。女性が愚痴を言う目的は、ただ誰かに話を聞いてもらいたいからであって、解決策などとうの昔に自分で気づいていることを知っているから正しい行動がとれる。女性の愚痴を、「そうだよね。うん、うん、わかるよ」などと相槌を打ちながら聞いている。日本人男性は、わかっていてもなかなかできない。理屈で勝負したがり、自分が正しいことを証明したがる。わたしも長年そうやってきたが、ほとんどの女性はそういう男性の態度を見て、「バッカじゃないの?」と本気で思うらしい。読者の中に、もしこの話が嘘だと思う人がいるなら、実際に近くにいる女性に聞いてみて欲しい。女性の本音を聞くのは怖いが、一生知らないよりマシだろう。
では、どうすれば良いか。女性からの相談だった場合、どうすれば良いかをわかっていたとしても、「うーん、難しい。どうすればいいだろう。あと少しで答えが出そうなんだけどなあ。いや、難しい。ねえ、どうすればいいと思う?」などと適当に質問をしながらトボければ良い。ほとんどの場合、相手は答えを知っているのだから、その答えを聞いたあと、「ああ、それそれ。それいいね!」などと言うだけで良いのだ。彼女はきっと素直に喜んでくれるだろう。
わたしは中国人の教え子たちが失敗したときに「なぜ?」「どうして?」と聞かないようにしている。教え子たちは中国人だから上手に理由を答えてくれるだろうが、日本語を学ぶ彼らには、日本人の聞き方も学んで欲しいと思っているからだ。さきほど、「なぜ」はロジックを理解するための質問だと述べたが、「どうすればよいか」を聞くには、「じっくり話を聞きたい」という謙虚な姿勢が必要だ。つまり、謙遜の文化を持つ日本人にはぴったりの聞き方なのだ。
>>>>中国語訳文
>>>>笈川幸司先生の紹介
「人民網日本語版」2012年11月8日