「江南スタイル」世界的ブームの秘密 (2)
それに伴い、国家と民族文化の「境界線」がだんだんと曖昧なものになり始めた。1970年代生まれは、伝統的・民族的な「モノ」を持ち続けると同時に、「現代的」で「世界的」な「モノ」に急接近するようになった。彼らに続く1980年代・1990年代生まれになると、世界の流行文化を自ら進んで受け入れている。彼らは、世界の若者たちと同じ飲み物を飲み、同じファースト・フードを食べ、同じ大作映画を観賞し、同じ電子ゲームで遊ぶ。さらに、同じファッションに身を包む。文化面での彼らの同質化は、親世代とは全く異なった様相を呈している。
これは、新しい「地球村時代」の幕開けといえよう。新時代は、「サイ」のような「地球村ミュージシャン」を輩出する。彼らは、自国の音楽文化を熟知した上で、優れた欧米教育も受ける。彼らが創作する作品は、必然的に、伝統と文化、民族と世界がミックスした「混合物」となる。なかでも最も重要な点は、これらの「混合物」が、若者文化を担う消費層に共感と共鳴を巻き起こすという事実だ。
共感・共鳴に関して言えば、「江南スタイル」に米ポップカルチャーのエッセンスが含まれていることは否定できない。この曲は、韓国的であると同時に米国的でもある。だからこそ、最初に米国でヒットした。「江南スタイル」の大ヒットは、米ポップカルチャーが、その革新的な商業モデルや伝播ツールの力を借りて、世界流行文化における主導的地位を占めたという事情を映し出している。
しかし、「江南スタイル」の流行は、今の「グローバル伝播システム」が誰にとっても十分に利用可能であることを示している。米ポップカルチャーは、全世界に向かうと同時に、文化消費に興味を持つ消費者層も生み出した。米国以外のクリエイターは、アジア人であろうとアフリカ人であろうと、文化伝播の面で弱い立場にある。だが、これらの消費者層の関心を引くことさえできれば、彼らの作品も世界中に広がる可能性は大いにある。この点から見て、「サイ」の「思いがけない」成功によって、文化伝播のための新ルートが切り開かれたといえるだろう。(編集KM)
「人民網日本語版」2012年12月17日