2014年5月12日  
 

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異色のSFラブストーリー「黒四角」の奥原浩志監督インタビュー (4)

 2014年05月12日14:24
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 後半の重要な要素となる戦争の記憶について、奥原監督は次のように語る。

 「戦争の要素は絶対に映画の中に入れようと決めていた。中国で撮る最初の映画だから、一番難しいところから入ってやれという思いもあった。いわゆる、日本から来た留学生と中国の女の子の恋愛といったありがちなテーマではなく、観客に何かひっかかりを持たせないといけないと考えていた。以前から、好きな作家の中国を題材とした作品はよく読んでいたが、北京に来てからは意識して、積極的に中国に関わる本を読んで勉強した。当時の日本の兵隊の手記もかなり読んだ。また、もともと中国での公開があまり現実的ではなく、日本で公開されるほうが可能性が大きいということもあって、戦争がフックになるかもしれないと打算的に考えた部分もある」。

 しかし、それよりも奥原監督にとっては、実際に北京で暮らして体験した「ある感覚」が大事だったように感じる。

 「日本にいると、戦争というのはどこか現実から切り離された遠い過去の話のように感じたりもするが、中国にいると戦争と今自分が生きている世界が直線的につながっていて、いつでも、どこにいても、戦争のことを意識させられる」。さらに、「実際、既視感を感じたことが実際にあって、日常的に通る静かな胡同の通りでも、ふと、白昼に日本兵が突然横切ったりするイメージに襲われたり、盧溝橋に行ったときも、川の水が干からびてしまっていて、当時と全然違うはずなのに、空の広さとか、線路脇にある兵隊の訓練所みたいなところが今でもあって、盧溝橋事件が起こったときの空間と、今自分が立っている時間と空間が本当につながっているんだなというイメージが生々しく浮かんできた。その辺が結構映画のモチーフになっている。時間と空間がリンクするというか、つながっているという。いつ出てくるかわからないという感じが」と語る。

 ■映画の重要なモチーフ、「愛」と「亡霊」はほとんど同じもの

 奥原監督が語るこの「時間と空間がリンクする、いつ出てくるかわからない」という感覚は、信じたり、信じられたり、存在するかどうかよくわからず、いつ現れ消えるかもわからない「亡霊」と「愛」として、映画の全編を通して重要なモチーフとなって登場する。もともと奥原監督は、映画で使われた脚本とは別バージョンの脚本を用意していた。しかし、予算の都合で、日本と北京が舞台だった設定を北京だけにしたことや、主演に中泉秀雄を迎え入れることが決まったことから、具体的に役者をイメージして脚本を書き直すことにした。その経緯について、奥原監督は、「中泉英雄はなんといってもイケメンなので、ラブストーリーを軸に据えようと安易に思い、脚本を書き直した。ただ、前半と後半の話がかみ合わなくて悩んでいたとき、ある文芸批評を読んで、ふと亡霊と愛はとてもよく似ている、ほとんど同じものと言ってもいい存在であることに気付いた。そこから脚本を一気に書き上げた」と語る。

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