奥原浩志監督 |
■普遍的で観念的な映画を撮っていきたい
中国生活を経た上で、見えてきた今後の新たな方向性については、「中国で撮るにしても、どこで撮るにしても、常に日本という存在が対極にある。日本との関係性や日本という投射物があって、そこから作られるものしか撮れないと考えている。今、日本の社会はすごくウェットで、映画も感動ブームが広がっている。皆が映画に求めているのはあくまでも物語。でも、僕はあえてそれに抵抗するというか、反抗心があって、これからも観念的な映画を撮っていきたい。もちろん感情もからむけれど、もっと普遍的で観念的な映画を撮りたい」と語る。
残念ながら、「黒四角」はまだ中国では公開が認められていない。今のままでは公開できないため、現在中国人プロデューサーが中心となり、編集に手を加えているところだという。ただ今回、ほとんど頼るべき人がいない中、中国で一からの映画作りを経験したことで、奥原監督は「すごい自信になった。これを経験したことで、今後どこにいっても映画を撮れるという自信ができた」と語る。映画を続けていく根拠を見つけるために中国に来たという奥原監督。日本映画界の中堅として自らの立ち居地、歩むべき道を探りながら、異郷の地で中国人プロデューサーと共に、これまで以上に大きな世界観で映画を撮った奥原監督の努力と粘りに拍手を送りたい。奥原監督は、きっと今後も中国、日本、あるいはまったく違う別の地で「メイド・イン・ジャパン」とは異なる視点の一味違う映画を発信していくことだろう。(編集MZ)
「黒四角」は5月17日からケイズシネマ他にて順次ロードショー
公式サイト:http://www.u-picc.com/black_square/index.html
(奥原浩志監督のプロフィール)
1968年生まれ。「ピクニック」がPFFアワード1993で観客賞とキャスティング賞を、「砂漠の民カザック」がPFFアワード1994で録音賞を受賞。99年に製作された「タイムレス・メロディ」では釜山国際映画祭グランプリを受賞した。その後、「波」(01)でロッテルダム国際映画祭NetPac Awardを受賞するなど、高い評価を受ける。その他の作品に「青い車」(04)、「16[jyu-roku]」(07)がある。本作品は、5本目の長編劇場作品に当たる。
「人民網日本語版」2014年5月12日