▽武器には漫画で対抗
デモでは、自作の風刺画や犠牲となった漫画家のコピーを張ったプラカードが多く見られた。犠牲となった風刺画家はテレビなどにも出演する国民に親しまれた人物だった。抗議がこれほど盛り上がったのは、編集部への攻撃を自分のものとして市民が捉えたからだし、そうした暴力を野放しにしておいてはいけないと市民が危機感を持ったからでもあった。
「シャルリ・エブド」の風刺の対象となったのはイスラム教ばかりではない。今回のデモで行進したオランド大統領も笑いの種だった。日本では宗教を風刺画の対象とした同誌に慎重さが欠けていたのではと指摘するメディアもある。だが「私はあなたの意見には反対だ、だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る」というヴォルテールの国である。今回のデモは、言論を暴力で圧殺するテロ行為にフランスは断固として立ち向かうという意思表示となった。
今回のデモでは、漫画家や作家の武器である鉛筆がシンボルとなった。巨大な鉛筆のハリボテを作ってくる人、鉛筆を髪留めにして来た人、一家で鉛筆を握って来た人などの姿が見られた。言論は時に暴力による襲撃に遭遇する。だがそれは言論に力がないからではない。むしろ言論に力があるからである。日本では慰安婦報道について誹謗中傷を受けた元朝日新聞の記者の勤務先にテロ予告がなされているという。言論を支えるのは人民である。テロに屈してはならない。