世界貿易機関(WTO)はこのほど、日本の貿易政策に対する3日間にわたる審査を行った。審査の内容は、日本の貿易政策や貿易方法、マクロ経済環境などに及んだ。WTOメンバーは、日本の安倍晋三首相のシンボルとも言える経済戦略に対する関心を示すと同時に、「アベノミクス」は依然として日本経済の力強い成長を実現する力を十分に発揮できていないとの認識を示した。経済日報が伝えた。
安倍首相は2012年末の就任後すぐに「アベノミクス」を打ち出し、長年にわたって続いた経済低迷からの脱却をはかった。「アベノミクス」の中心は、「大胆な金融政策」「積極的な財政政策」「経済構造改革」の「3本の矢」からなるとされる。WTOの審査報告は、「アベノミクス」の「第1の矢」と「第2の矢」について、「前回の審査以降、日本が取った拡張的な金融・財政政策措置は、経済を支える効果をすでに上げているものの、力強い経済成長を引っ張るだけの力を十分に発揮しているとは言えない」と評価し、「第3の矢」として掲げられた構造改革が日本の長期的で持続可能な成長の確保に大きな重要性を持つことを強調した。
WTO貿易政策検討機関のAtanas Paparizov代表(ブルガリア大使)は、「アベノミクスの最初の2本の矢は短期的な刺激策にすぎず、第3の矢によって初めて、長期的で持続可能な成長の土台を築くことができる」と指摘する。WTOメンバーは日本に対し、「貿易・投資の自由化措置を含むこれらの構造改革をただちに実施すべきだ」と勧告している。
日本経済に占める農業の割合は小さいが、日本の農業部門に対する手厚い保護はこれまで国際社会の非難の的となって来た。審査報告は、「農業に対する政府の支援と保護が厚いことで、小規模農家も利益を上げることができ、農業収入以外の補填を得ることができてきた。だがその結果は、農業人口の高齢化と効率の低い農業部門の温存だった」と指摘する。審査では、WTOメンバーの多くが日本の農業政策に疑問を呈し、農業に対する日本の支援と保護の水準がOECDのほかの国々に比べて高いことが特に問題視された。WTO米国大使のマイケル・パンク氏は審査で、農協システムの運営方式に関して日本が打ち出した改革計画を歓迎しながらも、カギとなるのは改革措置が実行できるかということだと指摘した。