■ 遠征1号の機能と役割
中国キャリアロケット技術研究院によって開発された遠征1号の上段は、現在活躍中の長征三号ロケットや、開発中の大型ロケット長征五号の最上段にされ、衛星を目的の軌道まで送り届ける役割を担う。推進剤には四酸化二窒素と非対称ジメチルヒドラジンの組み合わせを使用し、2回の再着火が可能。これにより、複数の衛星をそれぞれ異なる軌道へ送り届けたり、衛星を目標の軌道に直接投入したりといったことが可能となる。上段ロケットは任務完了後、自動的に宇宙ゴミの軌道に入り、貴重な静止軌道の資源を無駄にすることはない。
中軌道衛星や静止衛星の打ち上げの場合、一旦高度が低い軌道に投入し、そこから衛星のスラスターを使って最終的な目標の軌道へ移るのが一般的だが、ロケット側が目標の軌道まで直接、あるいはそれに近い軌道まで衛星を送り届けることができれば、衛星にとって大きな負担軽減となる——衛星の燃料消費量を大幅に削減し、使用寿命を延長する。また、打上げ回数とコストを減らすことで、日増しに増加する宇宙船の高密度打上げの需要を満たすこともできる。>>>>詳細へ
■誰を「送迎」するのか?
中国新聞網によると、3月30日午後9時52分、「長征3号丙」ロケットを使い、次世代北斗衛星を西昌衛星発射センターから打上げた。北斗の衛星は、長征3号乙/G1や長征3号丙を使い、1機ないしは2機同時に打ち上げられているが、遠征一号により最大で4機同時に打ち上げることが可能となる。>>>>詳細へ
「北斗」(BDS)は、中国が独自開発し、運営する衛星測位システムで、米国のGPSとロシアのGLONASSに続く世界3番目の成熟した衛星測位システムだ。同システムは宇宙・地上・ユーザーにより構成され、高精度かつ信頼性の高い測位・ナビゲーション・時刻配信サービスを提供(全世界・全天候・24時間)するほか、ショートメッセージ通信能力を持つ。中国交通運輸部(省)外事局巡視員の李青平氏は2015年2月12日、中国交通運輸部が開いた記者会見において、「中国の北斗衛星測位システムの測位精度は約10メートルに、速度の精度は毎秒0.7メートルに達し、非常に高い精度となった」と述べた。
■幅広い応用領域
上段ロケットの軌道制御能力を利用し、一つのロケットで複数の衛星を打上げることで、打上げ効率を効果的に引き上げられるから、ロケットの打上げ能力を最大限に発揮できる。また、未来の月・火星探査などの深宇宙探査任務、軌道制御、宇宙ゴミの除去などの軌道上のサービス、新材料・新技術の検証といった宇宙実験において、これは重要な力を発揮する。(編集SC)
「人民網日本語版」2015年3月31日