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現役引退 劉翔の笑顔と伝説を忘れないでほしい (2)

人民網日本語版 2015年04月09日10:49

劉翔は陸上男子110メートルハードルでアジアを征服しただけでなく、天真爛漫な笑顔と豊かな表情で世界を魅了した。躍動的で力強い劉翔は、躍動する中国や中国スポーツ界を象徴する存在だった。

当時、中国代表が初めて五輪会場に登場した際、カメラの前の中国人選手はみな堅苦しい表情で寡黙だった。中国代表団の選手は常に統一された服装を身に着け、歩き方も兵士のように整然としていて、幾分派手さや個性、開放的な雰囲気に欠けていた。金メダルを獲得した時でさえ、喜びの表現は控えめ目で、まるで用意された回答を丸暗記してしゃべっているような印象だった。「鋼鉄のバラ」ことサッカー女子中国代表が登場した際にも、メディアでは「中国人女性の皆さん、笑ってください」と期待する声が上がるほどだった。

そんな中、屈託のない笑顔や生命力に溢れた個人の魅力を発揮する劉翔が登場すると、スポーツや試合を心から堪能している様子が伝わってきた。これこそが、五輪精神の神髄ともいうべきスポーツの原点への回帰である。そして、これは劉翔が獲得した金メダルや世界記録よりも、ずっと評価されるべきものだ。劉翔は、バスケ界のスター、姚明と共に以前よりリラックスして、開放的で、五輪的な中国スポーツ界の一時代を築いた。この時代は中国改革開放の歩みが最も速い時期と重なったことで、世界中の人々は2人の姿に、急速に発展する中国のイメージを重ね合わせた。

残念なのは、今でも「勝てば官軍、負ければ賊軍」という強者の論理を信じている人が少なくないことだ。劉翔の五輪での不運な出来事は、劉翔がこれまで中国のスポーツ界に果たしてきた多大な貢献を徹底的に封印するのに十分な理由を一部の人たちに与えてしまった。さらには、劉翔のプライドや個性、笑顔までもが同時に封印されてしまった。劉翔本人でさえ試合を棄権した後に積み重ねて来たあらゆる努力やがんばりを、無念さによる虚無感、さらには沈痛な思いに変えてしまい、かつて誰よりもスポーツの楽しさを堪能していた「劉翔」が消えてしまった。それに取って代わったのは、「劉跑跑」(逃げる劉翔)という汚名を早く自らの手で晴らそうともがく「プライドを傷つけられた人」だった。

劉翔は、中国人の国民性の誇るべきところと卑しさを照らし出す鏡のような存在だ。劉翔がかつて見せた躍動感や笑顔からは、改革が進む中国の力強い台頭が見て取れた。そして、劉翔がかつて経験したやるせなさや悲しみ、不安には、中国伝統の成功者に対する独占的な寵愛や失敗者に対する不寛容さが映し出されている。劉翔の自信は、当然我々の自信でもあったが、劉翔の失意は、我々に反省を促すものだ。失敗を犯した英雄を大切にできないのなら、次に誰がこの難しい任務を引き受けるだろうか?どちらにしても、この世に勝ち続けることができる兵士など存在しない。劉翔は伝説的な人物であり、この伝説は人々が褒め称えようと、貶そうと、将来永遠に語り継がれていくことだろう。(編集MZ)

「人民網日本語版」2015年4月9日         


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