「円安、株高」といった市場の動きから、アベノミクスが一定の功績を挙げたことは間違いないとわかる。円安は日本の輸出企業の利益を押し上げ、原油価格の下落とともに、経済成長に持続的なエネルギーを注入した。これと同時に、日本株の上昇がもたらした巨額の利益の効果が、日本の人々に「よい思い」をさせ、内需を効果的に牽引した。だが政策決定者は別の一連の問題を軽視していたようでもある。日経新聞が伝えたように、経済に対する円安のメリットが徐々に薄れており、試算によれば、国内総生産(GDP)への貢献度は0.2%に過ぎなかったという。これは一方では、円高の時に日本企業が生産拠点を海外に移し、日本経済の構造が変わったことがある。また東日本大震災後の燃料の輸入増加などが原因で、日本の貿易収支の黒字は07年以降は増加していないどころか、減少傾向さえみせており、かつて10兆円あった黒字が今は9兆円の赤字になったこともある。ここから日本経済に対する貿易の牽引効果が徐々に弱まり、日本企業にとっては投資がより試しやすい金儲けの道になったことがわかる。言い換えれば、輸出量の減少にともない、円安の効果も弱まっている。それだけでなく、過度の円安が原材料価格や食品価格の上昇を招き、日本の製造業と国内の消費にマイナスをもたらしていることは明らかだ。
さまざまな副作用を考え合わせると、政策決定者が現在の市場に向き合う時にはより客観的になるとみられる。甘利経済産業相や菅義偉内閣官房長官といった政府要人は為替変動リスクに注目するが、政策を考えると、円安を持続的に推進することが、今とこれからの相当長期にわたり主要な任務の一つになる。日本銀行(中央銀行)の黒田東彦総裁はこのほど行われた金融政策決定会合後の記者会見で、「2016年度上半期頃にインフレ目標の2%は達成できる見込みだ」と述べた。だが黒田総裁はこれまでは15年頃に目標を実現するとしていた。ここから、日銀が今後さらなる金融緩和措置を取ってインフレを誘導する可能性があると十分に信じられる理由があることがわかる。日銀が上場投資信託(ETF)を追加購入し、債券の購入を減らすとみる人もいれば、地方政府の債券を試験的に購入するという人もおり、また金融当局がインフレ目標を3%に引き上げるか、あるいは過剰外貨準備率を引き下げるとみる人もいる。どのような措置を取るにせよ、金融政策の緩和基調は変わらないため、円の弱気市場を支えるだけの土台は十分にあるといえる。言い換えれば、円の値下がりへの強い期待の中、懸念される一連のマイナス効果が経済の回復を阻害する主な要因になるかどうかは、複数の経済データをみてこれから検証していかなくてはならないということだ。だが否定できないことがある。それはアベノミクスが予定通りに目標を達成していないこと、当局者はこの点をしっかり振り返る必要があることだ。(編集KS)
「人民網日本語版」2015年5月31日