▽従来型PC、斜陽産業に
産業経済ウォッチャーの梁振鵬氏によると、PC事業は現在、下り坂にある。市場はすでに飽和状態で、企業の収益状況は、PC製品が爆発的に成長していた時期とは比べ物にならなくなっている。中国さらに世界のPC市場では、日系製品はすでに優位性を失い、市場シェアは大きく下がっている。現在、市場シェアのほとんどを占めているのは、レノボやHP、デル、アップルなどである。ソニーと富士通がPC事業を分離させたのは、子会社の価値評価を明確かつ詳細に行い、今後の売却または他社との統合に備えるためと考えられる。
IT産業は、かつての盛り上がりを失っている。2011年にPC販売台数3億5280万台を記録した後、世界のPC市場は4年連続で縮小している。四半期ごとのデータで見ると、PC販売台数がピークを迎えたのは、2011年第3四半期の9610万台だった。2015年第3四半期の世界のPC販売台数は7100万台にとどまっている。PCブランドの市場シェアを見ると、2015年第3四半期のPC製品の出荷台数で主要な位置を占めているのは、HP、レノボ、デル、アップル、エイサー、ASUSで、日系ブランドは見当たらない。
PC市場が縮小を続けていることについて、業界関係者は、タブレット端末とスマートフォンの普及と大きな関係があると分析している。アップルのiPadを代表とするタブレット端末は、よりフレキシブルな携帯性と豊富な娯楽性によって、従来型PC市場に大きな打撃を与えている。科学技術の発展に伴い、スマートフォンは電子消費の新たな成長市場となり、より優れた携帯性と機能性によって市場を席巻し、PC製品は総崩れを余儀なくされている。
▽部門統合も厳しい状況はかわらず
12月初めには、東芝と富士通が各自のPC事業を分離し、両者のPC事業を元ソニー傘下のVAIOに統合し、最終的にはVAIOブランドを採用するとの情報が出た。富士通はこの時、その選択肢も視野に入れているとの立場を示していた。富士通が今回、PC事業と携帯事業の独立化を宣言したのは、同社がすでにこの統合のプロセスを始めたことを意味するとも考えられる。こうした戦略は日本では初めてではなく、2011年、ソニーと日立、東芝は、それぞれのディスプレイ事業を分離し、現在の「ジャパンディスプレイ」を設立していた。
だが梁振鵬氏は、今回選択肢とされているPC部門の統合は、強者同士の連合とは言えず、弱者同士の寄り合いとなりかねないと指摘する。これらのメーカーのPC製品は競争力に欠け、市場全体も不景気であるため、赤字の現状を転換する力はない。統合のメリットは、事業規模を拡大することにより、サプライヤーとの価格交渉能力を高めることくらいしかない。
東芝を例に取ると、今年の財政年度第1四半期(4-6月)の財務報告によると、東芝の純損失は123億円にのぼった。PCやテレビ、家電などを含むライフスタイル部門の営業赤字は207億円に達した。(編集MA)
「人民網日本語版」2015年12月30日