同じ百回本でも日本無窮会所蔵の「水滸伝」は中国国内に現存する容与堂本と天都外臣序本等の百回本とは内容が大きく異なっている。この版本は文字、内容、頭書き、用紙など様々な面で独特な特徴をもち、「水滸伝」が流布していく過程で新たな版本と異なる風格が生まれていることがわかる。例えば、柴進が宮廷の睿思殿に潜入して、白い衝立に書かれた文字を見るシーンでは、ほとんどの版本で「四大叛徒」の名前として山東の宋江、淮西の王慶、河北の田虎、江南の方ロウが挙げられているが、日本無窮会所蔵版はそれが山東の宋江、薊北遼国、江南の方ロウという「三大叛徒」になっている。
西南師範大学出版社の担当者は「日本無窮会が所蔵する版本の価値は非常に高く、『水滸伝』の流布している版本における多くの疑問を解決する上でのヒントを提供し、学者たちがもつ数多くの謎を解き明かしてくれている。また『水滸伝(日本無窮会蔵本)』の出版にあたっては中国社会科学院歴史研究所の専門家たちの努力を切り離しては考えられない。この本の出版は『水滸伝』の原本に新たな情報が加わったという点で、重要な学術価値を持つだろう」とした。
なお、特筆すべきは日本無窮会所蔵の「水滸伝」は全文に絵が添えられており、その一枚一枚が今にも動き出しそうなほど生き生きとしていることだ。さらに頭書きには李卓吾のすばらしい批評も収録されており、読者はさらに楽しみが増えることだろう。(編集TG)
「人民網日本語版」2016年5月12日