○沈黙による傷害
仏ル・モンド紙は、福島原発事故5周年に際して論説を発表、原発事故に対する日本政府の「思惑」を総括、それを「国家の忘却願望」という言葉で結論づけた。
日本政府は2013年8月、放射能に汚染された地下水が毎日少なくとも300トン以上、福島第一原発から海に流出しており、しかも、このような状況は、原発事故発生以来ずっと続いているという事実を認めた。だが、同年9月、安倍晋三総理は、東京五輪招致のプレゼンテーション・スピーチにおいて、汚染水問題に言及し、「状況はコントロールされている」「全く問題はない」と大嘘をついた。
東京の五輪招致が成功した後も、福島原発における放射能汚染水の漏水事故が発生したのは、2度や3度にとどまらなかった。福島県の某地方議会は抗議の書簡を送り、「政府は事実から目を背けている。重大な問題は残されたままだ」と、安倍総理の言い分を批判した。
事実を「遮る・覆う」やり方は、事故発生当初から見られた。国際原子力機関(IAEA)の天野之弥・事務局長によると、事故発生当初、IAEAに入ってくる関連情報は非常に乏しかったという。このため、天野氏は自ら日本に赴き、当時の政府指導層に対して状況説明を求め、ようやく日本はさらなる情報を提供した。
さらに人を驚愕させたことは、東京電力関係者が、同社の炉心溶融(メルトダウン)に関する報告が遅れたことを実証したことだ。東電担当者は、事故発生前から同社にはメルトダウンの判定基準があったが、今年2月になって初めて、この判断基準の存在に気づいた始末で、事故発生後5年間ずっと、判断基準について知らなかったことを明らかにした。