▽安倍政権が抱える「影」
第2次安倍内閣は、国内的には民主党政権の失策に対する国民の不満にかこつけ、また国外的には円安に伴う輸出増の風に乗り、アベノミクスという大旗を掲げて人気を集めた。NHKの世論調査によると、2014年1月の時点で、安倍内閣の支持率は54%に達した。発足から1年以上がたっても支持率50%以上を維持し続けた内閣はここ10年来で多くはない。しかも、次の選挙は2016年に行われるため、もし何か大きな問題が起きなければ安倍内閣は長期的に安定した政権になると見られる。
しかし、安倍内閣もこれで全て安泰、というわけではない。
東日本大震災の被災者は今に至るまで仮設住宅での生活を強いられている。現地の放射能汚染問題も対策が見つかっていない。また、アベノミクスによる経済効果は、ほとんどの人に利益をもたらしておらず、むしろ貧富の差の拡大が加速している。近頃消費が増えているのも、4月から実施される消費税増税を前にした駆け込み需要のためだ。円安は日本製品の輸出を促進したが、一方で原料輸入の負担も増加した。経済界の関係者は早くから今年下半期に日本経済が減速するだろうと警告を発している。
しかし、真の意味で国内外に懸念をもたらしているのは、時が経つにつれて露わになってきた安倍内閣の「憲法改正で政治大国になる」という真の目的だ。
国内的には、言論の自由を制限する「特定秘密保護法」を可決させ、内閣の権限を強化する「国家安全保障会議設置法」が成立した。米国をまねて国家安全保障会議を発足させ、現役自衛官の多くを政策決定の中心に参加させた。