(一)改革開放の深化に力を入れ、市場の活力と内生的原動力を引き出した。国内外の環境が非常に複雑でマクロコントロールが極めて難しい舵取りを迫られる状況の下、われわれは根底に力を入れ、改革開放を発展の根本的な方策とし、市場の「見えざる手」を解き放つ一方で政府の「見える手」をうまく使って、経済の安定した成長を促した。
われわれは政府自体の改革から着手し、「政府の機能転換の加速」と「行政の簡素化と下部への権限委譲」を今期政府の最初の大仕事とした。国務院の機構改革を秩序立てて実施し、行政審査・認可などの事項の撤廃や下部への委譲を数回に分けて計416件行い、「政府認可投資項目目録」を改定し、工商登記制度の改革を進めた。各地方政府(省級)も政府の機能転換と機構改革を積極的に推し進め、行政審査・認可事項を大幅に削減した。「営業税から付加価値税への切り替え」の試行範囲を広げ、行政機関による管理や公的事業体のサービスに払う費用・料金を348項目撤廃・免除し、企業の負担を1500億元以上軽減した。これにより、市場への規制が緩和され、企業の活力が増して、全国の新規登録企業数が27.6%伸び、民間投資の割合が63%に上昇した。貸付金利に対する規制を全面的に撤廃し、全国で「中小企業株式譲渡システム」のテスト作業を進めた。不動産登記の一本化をスタートさせた。こうした行政の簡素化と下部への権限委譲などの改革は、市場の活力、発展の原動力、社会の創造力を大いに引き出した。
われわれは改革開放のより深いレベルへの開拓を推し進めた。中国(上海)自由貿易試験区を設立し、外資に対する「参入前内国民待遇とネガティブリスト管理」方式を模索した。「シルクロード経済ベルト」、「21世紀・海のシルクロード」の建設構想を打ち出した。中国・ASEAN自由貿易地域(ACFTA)の「アップグレード版」を構築した。スイス、アイスランドと自由貿易協定を締結した。対外貿易の伸びを安定させる政策を実施し、税関や検査・検疫などの監督管理とサービスを改善した。太陽光パネルに対する「反ダンピング・反補助金」措置など大きな貿易摩擦に首尾よく対処した。高速鉄道・原子力発電などの技術・インフラの輸出を促した結果、対外投資が大幅に増加し、海外旅行者数が延べ1億人近くとなった。こうした開放の持続的推進によって、発展の余地が新たに広がった。
(二)マクロコントロールの考え方と方式を刷新し、経済の動きを合理的な範囲内にしっかりと保った。激しく変動する経済情勢に対処すべく、われわれは冷静さを保ち、安定成長と雇用確保の下限、インフレ防止の上限をきっちりと守りぬき、経済が合理的な範囲内で推移している限りはパターン転換・構造調整に集中的に力を注いで手をゆるめず、マクロ政策の基本方針を一貫して守って、市場の自信を強め、景気の先行きに対する社会の予測を安定させた。
昨年上半期は、輸出が大きく変動し、経済が持続的に減速し、中央財政収入に長年まれにみる減少が一時見られ、銀行間取引金利が一時異常なほど上昇したため、国際的に中国経済の「ハードランディング」を懸念する声があがった。こうした状況を受け、われわれは積極的な財政政策と穏健な金融政策の実施を堅持して、短期的な刺激策を採らず、赤字を増やさず、通貨を過剰に発行せず、効果的な供給を増やし、潜在的な需要を解き放ち、市場の短期的変動に冷静に対処し、経済の動きが合理的な範囲内からすべり出さないようにして、市場に「鎮静剤」を飲ませた。こうした取り組みは経済が安定を保ちつつ上向きに推移するうえでの決定的要因となった。その結果、昨年の財政赤字は予算の範囲内に抑えられ、広義マネーサプライ(M2)は13.6%伸び、コントロールの要求どおりとなった。