日本の安倍首相が中南米5カ国の訪問を終えた。安倍首相の外遊が始まって直後の7月27日、日本の共同通信社は、日本とブラジルが8月1日に発表する共同声明の草案が明らかになったと報じた。中国による防空識別圏の設定や東中国海・南中国海での海洋活動展開などを踏まえ、「南中国海での紛争を含む国際紛争は、武力や威圧によらず、平和的に国際法にのっとって解決されるべきだ」との内容が共同声明には盛り込まれ、中国を牽制する内容になると伝えた。
この報道は最初から理解しがたいものだった。共同通信社はいったい何がしたいのか。中国の国家主席がブラジルを訪問して得た成果を否定したいのか。日中関係を刺激したいのか。中国とブラジルの関係を刺激したいのか。安倍首相を応援したいのか、それとも恥をかかせたいのか。もしも共同声明にこの内容がなければ、安倍首相にとっては打撃にはならないか。
8月2日早朝、日本とブラジルの共同声明が発表された。だがその中には、共同通信社が報道したような中国の防空識別圏設立についての内容はなく、南中国海での紛争も触れられていなかった。ブラジル側は、中日間の紛争には介入しないと明言しており、共同声明には「武力による国際紛争解決に反対する」との内容があるだけだ。具体的な対象を示さず、どこに使ってもおかしくないようなこの文言を、共同通信社は「中国を牽制する」ねらいがあると解説している。
ここまで来て、共同通信社のねらいがわかった。安倍首相の意図を人々が理解しないのではないかと同社は心配しているのだ。どんなに小さな痕跡であろうとこれを拡大し、安倍首相がどれだけ努力しているかをより多くの人に知らせようとしているのだ。だがこれではまるで二人羽織ではないか。
安倍首相の外遊についての共同通信社の報道を見てみると、安倍首相の「中国を牽制する」言動が数多く取り上げられていることがわかる。昨年1月に安倍首相がベトナム・タイ・インドネシアを訪問した際には、共同通信社は、ASEANとの戦略的協力関係を強化して中国に共同で対処することが目的であるとした。昨年3月に安倍首相がモンゴルを訪問した際には、中国と朝鮮を牽制するねらいがあるとした。昨年7月に安倍首相がマレーシア・シンガポール・フィリピンを訪問した際には、協力を強化して中国を牽制する意図があると報道した。昨年11月に安倍首相がラオス・カンボジアを訪問した際には、南中国海などの海洋で活発に活動する中国を牽制するねらいがあるとした。