中国外交部(外務省)は7日、「フィリピン共和国の申し立てた南中国海仲裁の管轄権問題に関する中華人民共和国の立場文書」を発表した。これは国の領土主権を守るために中国外交が再び繰り出した強烈な一撃だ。(文:蘇暁暉・中国国際問題研究院国際戦略研究所副所長。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
フィリピンは中国の反対を顧みず、両国の南中国海に関する問題について国際的仲裁手続きを一方的に申し立て、強引に推し進めた。仲裁裁判所は、今年12月15日を中国側の陳述書提出期限と定めた。
国際的仲裁手続き申し立ての背後にあるのは、中国の主権・権益を損なおうとするフィリピンの腹黒い魂胆だ。もし中国がフィリピンの申し立てに応じて陳述書を提出すれば、仲裁という方法に同意することになり、フィリピンの仕掛けた罠にかかってしまう。だがひたすら堪え忍んで発言しないのも、圧力が高まることになる。真相を知らない人々が、中国が仲裁に応じないことをいぶかり、中国側の領有権の立場と証拠に疑問を呈することは避けがたい。さらに魂胆を抱く者は、これを機に騒ぎ立て、「仲裁の受け入れ=国際法の遵守」であるとして、国際規則に対する無視さらには挑戦だと中国を批判するだろう。陳述書を提出すべきか否か、中国はジレンマに陥ったかのように見えた。
仲裁裁判所の定めた期限を前に、フィリピンの仲裁申し立て問題に対する政府の立場文書を発表したことで、中国は受動的立場から主導的立場に転じた。
手法的には、外交部が政府の立場文書を発表したのは適切で理にかなっている。政府文書は高い効力を備え、フィリピンの仲裁申し立て問題に対する中国政府の厳粛な対応だ。文書は仲裁裁判所の要求する「陳述書」ではなく、仲裁裁判所の要求に応じたものではない、これによって、フィリピン側につけ込む隙を与えることを回避した。文書は冒頭から、仲裁の一方的性質を強調し、仲裁に断固反対する中国側の姿勢を重ねて表明し、仲裁を受け入れさせようとするフィリピンの企てを徹底的に粉砕した。
内容的には、立場文書は入念に組み立てられており、理にかない、節度がある。第1に、フィリピンの申し立てた仲裁に対して仲裁裁判所には管轄権がないことを明確に指摘した。論拠は3つの面から構成されている。まず、フィリピンの申し立てた仲裁事項は実質的に南中国海の一部の島や礁の領土主権問題であり、国連海洋法条約の解釈や適用には関わらない。次に、中比両国は南中国海紛争の交渉による解決で合意しており、強制的仲裁を一方的に申し立てる権利はフィリピン側にはない。最後に、たとえフィリピンの提起した事項が条約関連であったとしても、海洋境界画定の不可分の一部を構成しており、これは2006年の中国の声明により排除されているため、仲裁手続きを申し立ててはならない。この3つの面は互いに支え合って成り立ち、緊密につながっている。第2に、中国の島や礁を長年侵奪・占拠してきた事実を含む、中国の主権・権益を損なうフィリピンの不法行為、および提訴を利用して中国の南沙(英語名・スプラトリー)諸島の領有権を「切り取」ろうとするフィリピンの企てを暴き出し、仲裁に反対すべき証拠を提示した。第3に、文書は仲裁という方法を拒絶する理由を詳細に明らかにした。フィリピンの仲裁手続き申し立てはすでに国際世論を撹乱しており、中国に対して公正でない論説が後を絶たない。中国による政府文書発表は、これを正すものだ。