▽パスチャライズ牛乳と高温殺菌牛乳の優劣比較は客観的でない
最近の牛乳廃棄問題についての論争で、「栄養成分が低温殺菌のパスチャライズ牛乳に及ばない高温殺菌牛乳は輸送しやすいことから国内市場で主流になり、生乳を原料とする低温殺菌牛乳は国内での生産コストが高いことから市場で淘汰され、廃棄問題が発生することになった」という見方がある。こうした見方には検証が必要だ。
実際、低温殺菌牛乳と高温殺菌牛乳は加工技術が異なるが、主要な栄養成分に目立った違いはない。食品の安全性ということでいえば、高温殺菌牛乳は低温殺菌牛乳よりも優位に立っているといえる。低温殺菌牛乳は冷蔵チェーンについて極めて高い要求をつきつけるもので、問題が出現すれば、ただちに製品の品質に影響を及ぼす。一方、高温殺菌牛乳は超高温加熱処理法(UHT法)技術を利用するため、食品の安全性ということではより安定しているといえる。
世界の乳製品消費構造をみると、低温殺菌牛乳と高温殺菌牛乳が併存しており、欧州の多くの国では高温殺菌牛乳が主流だ。低温殺菌牛乳の生みの親であるルイス・パスツール博士の故国フランスでは、高温殺菌牛乳が市場シェアの95.5%を占める。他の国も同じような状況で、ベルギーは96.7%、スペインは95.7%、ポルトガルは92.9%だ。
中国乳業協会の楊利国副会長(華中農業大学教授)は、「どのような種類の製品を消費の主流にするかは、それぞれの国の事情によって決まる。中国は高温殺菌牛乳が市場の主流になる方向性を選んだのであり、現在の高温殺菌牛乳が占める70%以上のシェアは消費者が商品購入で投票した結果なのだ」と話す。
低温殺菌牛乳が全国規模で広がれば、高温殺菌牛乳のメーカーは非常に大きな市場の圧力に直面することになる。こうした圧力が産業の川上に伝わると、北部地域の加工原料乳が買い取り手を失ったり、買い取り手が減ったりして大量に余るという問題が起こり、乳業界を衰退に向かわせる可能性がある。(編集KS)
「人民網日本語版」2015年1月20日