今回、中国税関からどのような知的財産権の保護を受けられるかを中心に、中国税関での知的財産保護措置を概観しておく。
現段階までに、中国税関での知的財産保護の客体は、商標権、特許権、著作権に限定されている。また、知的財産権の属地特性の理由から、別途条約がない限り、外国法で成立てる知的財産権が中国税関の保護を受けられない。
保護の方式には、①申請による保護、②職権による保護と大別されるが、以下、それぞれのポイントを纏めておく。
一 申請による保護
申請による保護とは、権利者側が実際に自らの知財権利が侵害されたと疑う貨物が通関する際に、税関の差押措置等を税関に対し請求する手続きを意味する。
この場合、税関での知的財産権の事前届出手続き(下記職権による保護の前提条件と相違する)が必要ではないが、商品伝票金額と同額の担保の提供が要求されている。
また、税関による権利侵害の是非の調査、判断も行われない。被疑貨物が税関という行政上の差押を受けた後、権利者側が被疑権利侵害者の民事責任を追及する為、再度裁判所に司法上の差押を申請しなければならない。もし20日営業日以内に裁判所からの差押命令がない場合、税関は当該貨物の通関を許可しなければならない。
実務上には、申請による保護という税関の許可を得るための条件は相当に厳しく、商品伝票金額と同額の担保のほか、荷揚げ期日、被疑商品の状態、コンテナの番号などを提供しない限り、税関からの協力はなかなか得られない。
また、筆者が過去に代理した事例では、クライアントが実物と異なるコンテナ番号、荷揚げ期日などの情報を提供したため、税関の協力を得て一緒に現場まで行ったものの、被疑貨物を発見できなかったことがある。つまり、相当に正確な情報を把握しない限り(実務では専門調査会社をよく利用する)、申請による保護という税関の対応方式はなかなか利用しづらいのが現状である。