問題1:定年退職後の人生が短すぎる?
2010年に実施された第六回国勢調査の統計データによると、全国人口の平均寿命は74.83歳。平均寿命が伸びないと仮定すると、65歳で定年を迎えた後、残された人生の時間は10年にも満たないことになる。西安交通大学高齢・健康研究センターの曾衛紅・准教授は、「定年の延長は、平均寿命が伸びるという前提のもとでこそ、意味のある措置だ。働く期間が延びることはつまり、リタイア期間が減ることを意味する。たとえば、日本の定年は65歳だが、日本人の平均寿命は、女性86歳、男性82歳だ。これはすなわち、定年後20年間のリタイア人生があるということだ。一方、我々中国人には10年しか残されていない。定年延長を決める際には、平均寿命の伸びも考慮に入れなければならない」との見方を示した。
問題2:定年延長後、誰が小さい子供の面倒を見るのか?
数年前に行われた調査から、北京では8割、上海では5割から6割、全国では約半数の子供が、祖父母に面倒を見てもらっていることが判明した。定年が65歳に延長されると、彼らの孫世代の面倒は、一体だれが見るのだろうか。曾准教授は、乳幼児の世話について、「米国など複数の国では、託児施設が充実しており、生後3カ月以降の赤ん坊を預けることができる。一方、中国では、これらの施設はまだ整っておらず、外に出て働く女性のほとんどが、子供が生後6か月になるまでは専門施設に預けることができずにいる」と指摘した。
問題3:前期高齢者は、労働災害に見舞われやすい
まだ60歳を過ぎたばかりの前期高齢者は、身体的な条件は若者よりはるかにハンディがあり、仕事中の負傷など労働災害に見舞われる場合も多い。これらの前期高齢者に対する労働保障措置が完備されなければ、労働災害が増えるという状況は避けられないであろう。
問題4:企業コストが増加する
今の5種類の社会保障費に関し、企業側・従業員いずれにも、かなり大きな負担がかかっている。このうち最も大きいのは、年金と医療保険だ。たとえば陝西省では、年金保険料は企業が20%、従業員個人が8%負担している。医療保険料の負担割合は、企業が7%、個人が2%。さらに、失業保険、労災保険、出産保険などを加えると、社会保険関連で企業が負担する割合は、従業員の賃金総額の約3割に上る。社会保険費の負担が多くの企業に重くのしかかっている現状から、定年延長によってその負担がさらに大きくなると予想される。
問題5:高齢者の「失業」状態が長引く
医師や技術者など、経験豊かなほど歓迎される特別な職業をのぞき、企業は若い人を雇用したがるものだ。多くの高齢者にとって、仕事を見つけることはより難しくなる。よって、定年が延長されると、「失業状態」が長引くことになる。
問題6:非正規雇用労働者の負担が増加する?
正規に雇用されていない労働者がまだまだ多いのが現状だ。企業側は、このような人々に社会保険の加入手続を行っていないため、彼らは自分で社会保険に加入しなければならない。定年延長は、彼らが年金を受給できる年齢が数年遅れることを意味しており、生活に対する圧力が高まるのは間違いない。(編集KM)
「人民網日本語版」2015年3月12日