▽「アップグレード段階」に入った中日経済交流
小康社会の典型的なイメージは、あらゆる家庭にカラーテレビや冷蔵庫があるというものだ。これは中国ではほぼ実現されている。全面的な小康社会の建設は、過去とは異なり、自動車やパソコン、スマートフォン、近代化された教育・医療環境、海外観光旅行などを特徴としたものとなるだろう。
パソコンやスマートフォンは中国ではすでに相当普及しているが、内陸都市の一般市民が自動車を利用でき、ほとんどの人が海外旅行をする経済力を持つようになるには、まだ長い道のりを歩む必要がある。
スマートフォンの出現はすでに、情報の非対称性という問題を大きく解決した。中国の都市と農村の間には情報の取得の上での区別はほとんどない。だが市民の自動車利用の実現にあたっての問題は、生産力やエネルギーの不足にあるのではなく、現在の社会インフラが人々の需要を満足できていないということにある。あらゆる家庭が自動車を保持するようにするよりは、経済的で便利な公共交通システムを建設し、市民の外出の需要を満たした方がいい。全面的な小康社会の建設は、教育機会や疾病治療、芸術鑑賞などの面での格差を最大限減らすものである。
過去30年余りは、日本の製造業が中国に設備を輸出し、製造管理に参加し、世界に向けて製品を輸送・生産する段階だった。この段階の中日経済交流はすでに成熟し切っている。中日の新たな経済交流はアップグレートの時期を迎えており、その重点は、過去の技術・管理から、社会全体の流通体制の構築や医療レベルの向上、教育機会の均等へと転換しつつある。