日本文部科学省は最近、来年4月から使用する中学校教科書の検定結果を公表した。安倍内閣が教科書検定基準を改定してから初の教科書検定だ。このうち歴史問題や領土問題に関する記述は、日本および東アジアの将来に危険の種をまく可能性がある。(文:劉江永・本紙特約論説員、清華大学現代国際関係研究院副院長。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
日本の教科書の作成と検定制度は日本の内政だが、隣国との近代史などに関する記述はすでに内政の範囲を完全に超えている。教科書によって侵略の罪をうやむやにすることは、良識を育む助けにならない。中国侵略日本軍が1937年に引き起こした南京大虐殺について、検定前の教科書は「南京事件」と称し、日本軍が「捕虜や住民多数を殺害した」と記述していた。だが検定後の教科書では「捕虜や住民に波及し、死傷者多数が出た」に改められた。「日本軍の暴行は強く非難された」との記述を削除した教科書もある。いわゆる「波及」とは、日本軍国主義の戦争犯罪行為をうやむやにするものである。実際には1894年の甲午戦争(日清戦争)時の旅順であれ、1937年の南京であれ、捕虜や市民を残虐に殺戮するのは日本侵略軍の一貫したやり方だ。日本軍は南京で「捕虜を取らない」との命令を受けたため、全員を処理(虐殺)することを決定した。その凶暴な行為は書き尽くせぬほど多く、「波及」の二文字でうやむやにすることがどうしてできようか。
教科書による植民地支配の美化は、歴史観の衝突を激化させるだけだ。日本が朝鮮半島を併呑した「日韓併合条約」締結から今年で105年。日本は1910年から35年間、朝鮮半島に対して植民地支配を行った。日本が韓国併呑期間に実施した土地調査について、日本の教科書はこれまで日本が「近代化の名目を掲げて」実施したものとしていたが、今回「近代化を目的に」に改められた。朝鮮半島に対する植民地支配を美化して日本の次世代に伝えようとするものであり、全く反省の意がない。
教科書によって領土意識と「被害」意識を強化し、中韓と対抗する思想を教え込む。今回検定された社会科系の全ての教科書(地理、歴史、公民)および今春から使用する小学校の社会科系の全ての教科書が、中国の釣魚島を日本のいわゆる「尖閣諸島」および「固有の領土」と記している。日本の台湾植民地支配期の植民開発行為が、なんと釣魚島が日本のものであるいわゆる「根拠」とされている。日本の子どもたち全体に早くから誤った概念と教育を受け入れさせるものだ。このうち独島(日本名・竹島)については「韓国が不法占拠している」と記している。これは現在の日本と中国、韓国との関係を直接的に損なうだけでなく、長期的な害がある。