中国は2030年には高所得国の仲間入りをするだろう。今後16年間の経済は名目成長率が3.5%以下、実質成長率が2.7%以下にとどまるとの声があるが、これは実に根拠のない戯言だろう。(文:何偉文・中国とグローバル化のシンクタンク特別招聘シニア研究員。「新京報」掲載)
最近、中国が中所得国の罠に陥るのではないかとの議論や懸念が改めて起きている。中所得国の罠とは、世界銀行が2007年に発表した報告書「東アジアのルネッサンス」によるもので、主に一連の国・地域が発展して国民の平均所得が3千ドル(約36万8千円)に達すると、人件費が上昇し、技術には新たな進展がなく、先進国のような技術的強みもなく、低所得国のような人件費のメリットもないため、結果的に長期にわたり平均所得1万ドル(約122万8千円)の高所得水準に到達できない状態が続くという意味だ。中国はすでに中所得国であり、人件費の強みが徐々に失われ、技術はまだ低レベル・中レベルにとどまっているため、これから中所得国の罠に陥ることが懸念されるというのだ。
世銀の報告が発表されてから12年までの6年間に、世界では16のエコノミーが中所得国の段階を飛び越えて、高所得国の仲間入りを果たした。世銀は13年9月に新たな報告書「中所得国の罠」を発表し、中所得レベルのエコノミーが高所得のエコノミーに発展するには長い時間が必要であること、中所得から高所得に至る過程は一つの発展段階であり、罠とはみなさないことを論証した。世銀の公式サイトでは現在、07年の報告書は見ることができない。
13年の報告書は各エコノミーの国民総所得(GNI)を4段階に分け、平均所得1005ドル(約12万3千円)以下を低所得国、1006~3975ドル(約12万4千円~48万8千円)を低中所得国、3976~1万2275ドル(約48万9千円~150万8千円)を高中所得国、1万2276ドル(約150万8千円)以上を高所得国とした。つまり、中所得国とは平均所得が3976ドル以上で1万2275ドル以下の国であり、3千ドルあれば中所得国に入れるが、1万ドルあっても高所得国にはなれないということだ。