実際には、日本製の携帯が世界をリードし、モバイルインターネット発展の主要指標で上位に立っていた輝かしい時代もあった。しかし、インターネット時代の到来や米アップル社の登場などで、その時代にもすぐにピリオドが打たれた。日本の家電メーカーも同様の苦境に立たされている。
ただもくもくと仕事する時代は終結
一般社団法人「Japan Innovation Network」の専務理事を務める西口尚宏氏は、「日本の製造業が陥っている苦境は、伝統的な日本企業のイノベーション意識中に存在する『誤解』を映し出している。日本人は、成功とは、苦行僧のように一生懸命働く匠の精神と考えている。これがイノベーションに対する伝統的な理解にも大きく影響し、こつこつと努力を積み重ねることで、革新的な商品が開発できると考えている。しかし、このような『イノベーション』は、せっせと働いていても、実際には進歩しないという結果になりかねない」と指摘する。
そして、「単にわき目もふらず働くという時代はもう終わった。日本人が考えている『技術革新』のほか、世界での競争において、新たな市場価値を創造するというのがイノベーション。日本の企業は、イノベーションに対する理解の点で進歩しておらず、『技術起点』で止まっている。それは『価値の起点』になるべき」との見方を示している。
実際には、日本は現在でも、スマホ産業チェーンにおいて、影の実力者だ。例えば、アップルやサムスンなどの大手スマホメーカーに重要な部品を供給しているのが日本の企業なのだ。しかし、全体的に見ると、ユーザーの需要を十分に把握しておらず、「価値」を起点としたイノベーションの道を歩んでいないため、日本は技術的なメリットを、消費者や市場に受け入れる商品へと転じることができていない。