6月10日に出版された学術誌「国際ウィルス学雑誌」(最新号)は、中東呼吸器症候群(MERS)の研究の重要な進展を掲載した。中国と米国の科学者の共同研究チームは、MERSとコウモリから分離した類似するウイルスを比較し、2つの点突然変異によりコウモリの類似するウイルスが効果的に人体細胞に感染することを確認した。中国科学報が伝えた。
中国科学院武漢ウイルス研究所客員教授、米ミネソタ大学終身准教授の李放氏が代表者となり、復旦大学教授の姜世勃氏、ニューヨーク血液センター副研究員の杜蘭英氏、中国科学院武漢ウイルス研究所研究員の石正麗氏、ノースカロライナ大学教授のRalph Baric氏ら科学者の協力によって、MERSウイルスの動物の発生源、種を跨ぐ感染、細胞侵入メカニズムの研究で重要な進展があった。
研究チームは昨年、米国科学アカデミー紀要に論文を掲載し、コウモリがMERSウイルスの発生源である可能性を指摘した。ウイルスが人体細胞に感染する際に、先に細胞表面の受容体と結合し、細胞のトリプシンによって活性化する必要がある。研究者は今回、2つの突然変異により、ウイルスが人体細胞のトリプシンによって活性化し、人体細胞に侵入することが可能であることを確認した。これはウイルスがコウモリから人に感染する過程において、重要な役割を果たしている。
李氏が率いるチームは2005年、サイエンス誌に掲載した論文の中で、SARSウイルスがハクビシンから人に感染する際に、2つの点突然変異が決定的な影響を及ぼすことについて論述した。しかしSARSウイルスのこの2つの点突然変異はMERSと異なり、人体細胞の受容体に対する親和性を大幅に高める。そのためSARSウイルスとMERSウイルスは異なる進化の過程を踏まえた上で、人体細胞に対する感染力を強め、効果的に人に感染する能力をつける。李氏は、「将来的に、ウイルスのさまざまな進化の手段を詳細に研究し、ウイルスがいかにして動物の宿主から人に感染するかを突き止める必要がある」と話した。(編集YF)
「人民網日本語版」2015年6月16日