中国の一部都市で不動産価格が急上昇するたびに、中日両国では「中国バブル経済崩壊論」がささやかれ、中国の不動産市場とバブル崩壊前の日本経済を同一視するような文章が次々と出現する。環球時報が伝えた。(文:安田明宏・三井住友トラスト基礎研究所 海外市場調査部 副主任研究員)
確かに、今の中国は以下の方面において、不動産バブル崩壊前の日本とある程度の相似性がある。
(1)為替介入による過剰流動性
1985年、プラザ合意によって円高が進み、景気回復のため米ドルを大量に購入したことで流動性が過剰になり、バブルがもたらされた。中国も2005年の人民元為替改革後、貨幣価値の安定を保つために米ドルを購入したほか、2008年に実施された「4兆元の経済刺激策」により、過剰流動性の問題がある程度存在する。
(2)労働力の減少
日本は90年代前半に労働人口がピークを迎え、その後は減少しており、住宅ニーズにも影響が出ている。中国も人口ボーナスが減少するという問題に直面している。
(3)物価の変動
バブル崩壊前は日本の物価は相対的に安定していたが、崩壊後は長期的なデフレに陥った。中国は現在は物価が相対的に安定しているが、金融政策は効果が遅れて出るため、デフレリスクにはやはり警戒が必要だ。生産者物価指数(PPI)が数年連続で低下していることはその一例だ。