客観的にみて、マイナス金利政策は実践が理論に先立ち、どのような効果と影響があるかは時間をかけて見守る必要がある。だが欧日の中央銀行の政策実施から現在までの間に、一連のマイナス影響とリスクが現れ始めている。第1に、マイナス金利政策は銀行システムの安定性を損ない、社会の信用の根幹を揺るがしつつある。第2に、マイナス金利政策の出発点は企業投資と個人消費を喚起することにあったが、実際には人々はマイナス金利が長期的な資産価値を損なうと考えるようになり、逆の作用をもたらすことが予想される。企業は融資の借り換えをし、資金調達をコストを引き下げており、借金をしてリスクの高い資産に投資するところもあり、実体経済への投資意欲が弱まっている。こうして資産バブルのリスクが高まり、金融リスクがより多く潜在するようになった。消費者個人は所得の見通しに暗い気持ちを抱き、特に中・所得層は預金に影響が出るのではないかと懸念し、消費を控え始めている。第3に、マイナス金利という非常手段には見習うべき成功例がない。政策をやめれば資産バブルが崩壊し、金融がさらなる無秩序状態に陥り、経済が長期的な低迷に落ち込むことが予想される。第4に、欧日のマイナス金利に対抗して、米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げを停止したりペースを落としたりしており、その結果、ドル安が進行し、ユーロと円は大幅な値上がりになった。ドルが事実上主導する国際金融システムにあって、ユーロと円は値上がりするにしろ値下がりするにしろ、ドルに覇権を握られコントロールされている。これでマイナス金利政策が予想通りの効果を上げられるわけがない。
国際通貨基金(IMF)は最近発表した報告書の中で、「欧日中央銀行のマイナス金利政策には、一定の安全の問題と潜在的リスクが存在し、各国の政策決定当局の高い関心を呼び起こす」との見方を示した。実際、ポスト危機の時代にあって、次々に危機が訪れる金融、成長への力を欠いた経済、混乱を続ける市場に直面し、政府が1つの金融政策でこれほど複雑に錯綜する構造的な難問を解決することは難しく、総合的な、さまざまな措置を組み合わせた対応が必要になる。たとえば構造調整を加速させ、科学技術の革新を推進し、経済貿易協力を深化させ、金融の監督管理を強化し、経済のガバナンスを改革するなどだ。これと同時に、積極的な財政政策と緩やかな金融政策を採用して、さまざまな措置を同時に実施しなければ、金融の安定を保障し、経済を成長させることはできない。(編集KS)
「人民網日本語版」2016年5月13日