「アフレコはキャラクターの口の動きと一致していなければならないが、私たちが息継ぎをするタイミングでキャラクターの方はすでに口を開いてしまったり、まだ話し終わっていないのに、キャラクターの方は話し終えて口を閉じてしまっているということがしばしばだった。音や型が一致するところまで練習したら、今度は声の演じ分けにも注意しなければならなかった」と語る李さん。というのも、選ばれた9人の声優で劇中の256人のキャラクターを演じなければいけなかったからだ。1ヶ月目はたった5話分しかアフレコすることができず、みんなで一緒に聞いてはここがおかしい、あそこが変だと初めからやり直し。なぜなら「当時の録音設備は現在と異なり、録音の途中で一時停止することができなかったので、1つのセリフでもうまく録音できていないと最初からやり直さなければならなかった」からだ。
この作品が多くの子供たちに影響を与えた点について、李さんはあるエピソードを紹介してくれた。アニメの人気が出ると、李さんは毎月平均100通余りのファンレターを受け取るようになり、そんな中、湖北省のある女の子が彼女に心情を吐露する手紙を送って来た。手紙の中で女の子は他人の鉛筆を盗んでしまったが「一休さん」のアニメを見て影響を受け、鉛筆をこっそり持ち主に返したと告白していた。「私はすぐにその子に返事を書き、間違いを認め、それを正した勇気を褒めた」という。
今までに1000作品以上のテレビドラマやアニメのアフレコを担当している李さんは、80年代で最も人気の高かったこのアニメについて「1983年に『一休さん』の52話分のアフレコを行い、1988年にも続きの52話分のアフレコを担当した。この時代はちょうど改革開放が始まり、子供たちの知識欲が最も強かった」と語った。李さんは記者に対し、現在のアニメは数も多く、制作レベルも優れているが、かえって逸品と呼べる作品は少ない。アニメ界の人々にはぜひ「時間をかけていい作品を作って欲しい」とし、気付けば一世代、二世代の人々に影響を与えているような本当の意味での優れた作品を作って欲しいと提案した。(編集TG)
「人民網日本語版」2016年6月3日