中産階級とは、一般的には「社会の中堅層」と見なされている。だが、香港の中産階級は、自分達のことを「板挟み層」と評している。香港では、住宅価格は非常に高く、生活のリズムはスピーディで、競争のプレッシャーも大きい。彼らの収入は少なくはないが、自分自身の生活に決して満足していない。最近の調査から、香港の中産階級の幸福度指数は、北京や上海など大陸部都市よりはるかに低いことが明らかになった。人民日報海外版が伝えた。
○刹那的享楽を楽しむ「月光族」になる勇気はなし
香港では、「中産階級」の基準は複数ある。香港特区政府財政司の曾俊華・司長は、「中産階級とは、フランス映画を見て、コーヒーを飲む人々のことを指す」と言い、特区政府の梁振英・行政長官は、「住宅占有面積が500平方フィート(約46平方メートル)あれば、中産階級の基準を満たす」と文章に書いた。数カ月前に香港で実施された調査によると、多くの香港市民が、「中産階級とは、200万~800万香港ドル(約2680万~1億740万円)相当の住宅と50万~600万香港ドル(約670万~8050万円)の資産を所有し、月収3万~6万香港ドル(約40万~80万円)を得ている人を示す」と答えた。
米国の中産階級の基準は、「郊外に一軒家を所有し、3人の子供を持ち、1匹の犬を飼っており、1年間に2-3週間の有給休暇があり、国内旅行や海外旅行を楽しむ」というものだ。 香港の中産階級に対するイメージは、米国とはかなり異なる。香港市民は、「高級オフィス・ビルにせわしなく出入りし、いつも残業や研修に追われ、必死に働く人々」を、中産階級の真の姿として捉えている。
香港市民にとって最大の支出は住宅ローンだ。教育業に携わるA氏は、「月給は約6万香港ドル(約80万円)と、香港ではかなり高いレベルだが、住宅ローンの返済でこのうち40%が消えていく」と話した。やはり中産階級に入る胡氏夫妻は、それぞれ会計業と教育業の仕事をしており、月収は夫婦合わせて約5万香港ドル(約67万円)という。胡氏もまた、「住宅ローン返済額は、収入の3割以上を占める」と語った。
住宅ローンに次ぐ大きな支出は教育費だ。香港の子供たちは、名門校への入学を目指し、小さい頃からさまざまなお稽古事に通う。A氏は、「中産階級は、子供の教育にとりわけ熱心だ。子供の趣味の実力を伸ばし、競争力を高めるために、ピアノ、バイオリン、水泳などのお稽古事に小さい頃から通わせる。うちの場合も、3人の子供をお稽古事に通わせるための費用が毎月の総支出の2割を占めている。このため、食費や被服費など他の出費を極力抑え、旅行も我慢し、楽しみや遊びを控えている」と述べた。
○高まる重圧に膨らむ心配
香港・南華早報がこのほど発表した世論調査によると、香港の中産階級の幸福度指数は、大陸部都市より低いという。調査対象となった香港市民の多くが、「多忙な仕事で常に疲れているにもかかわらず、報酬は少ない」と答えた。このような状況から、彼らは、生活のさまざまな面で、マイナス感情を抱えている。
これは、「中等収入者群体の生活の質に関する研究」という調査で、北京、上海、広州、成都、西安、瀋陽、武漢および香港に住む2400人を対象に実施された。「自分は幸せだと感じている」と答えたのは、香港市民がわずか40%だったのに対し、上海と北京では70%に達した。
香港中文大学政治・行政学部の馬岳・准教授は、「この調査結果は、特に驚くような内容ではない。香港市民の幸福感は、他の世界各地より低い。というのも、香港が極めて圧力の大きい都市であるからだ。ここで生活するのは並大抵のことではなく、多くの市民が生活レベルや大気の質に不満を抱いている」との見方を示した。