フランスのカンヌで開催中の第67回カンヌ国際映画祭において、中国の巨匠・張芸謀(チャン・イーモウ)監督の新作「帰来(Coming Home) 」が3度上映され、いずれも満席になった。長年家に戻らなかった夫に対する、妻の思いと遺恨が描写されている同作品に、観客の多くが涙を流した。しかし、張監督は取材に対して「(観客は)自分の経験と重なるものがあったのだろう。とても意外だった。中国人に的を絞って制作し、外国人は考慮に入れなかった。分かってもらえるものがあればそれでいい」と冷静に語った。信息時報が報じた。
同作品がコンペティション部門へのノミネートを逃した事に関して、張監督は、「私は過去30年以上、常に戦ってきた。だから、コンペティション部門にノミネートされようと、されまいと、特に違いはない」とそれほど気にしていない様子だったものの、「役者にとっては、確かに残念な結果。主演の鞏俐(コン・リー)や陳道明(チェン・ダオミン)は抜群の演技をしてくれた。2人は他の役者と競える実力を備えている」と、役者を気遣った。
張監督をめぐっては、世界的な映画祭、特にアカデミー賞のノミネートを何度も逃していることにコンプレックスを感じているとメディアが報じてきたが、張監督自身は「なぜか私の一生の夢のようになってしまっている。私もよく分からない」と、メディアが作り上げたイメージであることを語った。
同じく華人監督である台湾の巨匠・李安(アン・リー)監督はアカデミー監督賞2回、ゴールデングローブ賞監督賞1回を受賞した経験があることについて、張監督は、「李監督は、中国と西洋の間を歩み、どちらからも高く評価されている唯一の監督」と評価した。
また、李監督の業績について、「うらやましいというよりも、とても尊敬している」と謙虚に語る張監督は、「彼の受けてきた教育や性格、作風、才能などはどれも、他の人にはない。中国と西洋の間を歩んでいる人は少なくないが、大きな成果を納めているのは彼だけ。彼はこの業界の達人になった。今後もアカデミー賞が期待できる」と李監督を絶賛する一方、「私には期待しないでほしい」と語った。(編集KN)
「人民網日本語版」2014年5月23日