ソニーの原点にあるのは技術革新。創業者の井深大は1946年、「真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」という設立目的を設立趣意書に掲げた。それから数十年、ソニーは、半導体ラジオやウォークマン、3.5インチフロッピーディスクなど画期的な12の技術革新製品を世の中に送り出してきた。だが「1990年代後半から、ソニーの革新能力は明らかに弱まってきた」。20年にわたってソニーを取材してきた日本経済新聞編集委員の西條都夫氏はその原因を、ソニーの経営理念が技術優先から販売優先に変わり、ソニーの体質が変化したことにあると見ている。プロ経営者は、技術開発が核心であることを認めながらも、業績を過度に重視し、販売量を指標とすることで、ソニーの革新能力を弱めることになった。今日のソニーにとって「エンジニアカルチャー」は「綱渡り」だ。経営者に試されているのは、市場開拓と技術革新の間のバランスを取る能力である。ベストセラーのゲーム機の開発を率いたソニーの元副社長は、現在の事業部長には新製品の開発経験のある人が少なく、優れた製品の開発で頭角を現す社員が欠けていると苦言を呈する。
東京大学ものづくり経営研究センターの特任研究員を務める吉川良三氏によると、韓国のサムソン電子は、1997年のアジア金融危機を契機として、製造業戦略の大転換を実現。デジタル技術をうまく利用して人気製品を開発し、すばやく大量生産に乗り出した。日本企業は一方、技術時代の成功をなぞることに固執し、独自の技術体系の構築にこだわり、チャンスを逸した。
▽社内に残る年功序列制 効果的な奨励制度の欠如
吉川氏は、日本企業は「国際化」と「グローバル化」を区別すべきだと指摘する。日本のこれまでの「国際化」は、海外の安価な労働力を利用して生産コストを引き下げることばかりが強調され、海外市場の需要と国内での設計とにズレが生じていた。一方、「グローバル化」は、異なる市場の消費者の多様なニーズにすばやく対応することを指す。日本にとって急務となるのは、革新的な精神を持つ人才の育成だ。サムソン電子での勤務経験もある吉川氏によれば、革新人材とは、「どこでも眠れ、何でも食べられ、誰とでも話せる」ような国際的視野を持つ人だという。
邢氏によると、ソニーは本当の国際化を実現していない。社内では依然として年功序列制が敷かれ、効果的な奨励制度が欠けている。
ソニーの平井一夫社長は最近の事業再編説明会で、ゲームとモバイル、イメージングをコア業務とすることを発表した。ウェアラブルデバイスも今後の開発の重点となる。ソニーの開発者も独自性と大衆性との間で製品のバランスをいかに保つかを考えている。ソニーはこれまで、ハイエンド市場をターゲットとしてきたが、ソニーのような大企業にとっては、ニッチ市場の製品だけで販売規模を支えることはできない。日経オンラインのコラム記事は、ソニー復活には、新技術の独自性へのこだわりを捨て、人々の生活を変えると同時に多くのユーザーに愛されるかつてのウォークマンのような製品を育てられるかがカギとなるとしている。
「人民網日本語版」2014年7月7日