中国経済の現在の成長率は3年前と比べると大きく下落している。GDP成長率は7.5%前後に下がり、名目GDP成長率も一ケタに落ち込んだ。中国経済にはまだ、比較的急速な成長を維持する潜在力があるのだろうか。あるとすれば、新たな成長分野はどこにあるのか。どのような改革・革新によって中国経済の新たな成長分野の発展を促すべきか。現在のマクロ経済の動向を分析するにはこれら3つの問題に答えなければならない。(作者・李稲葵、清華大学中国・世界経済研究センター主任)
中国経済には急速成長の潜在力がある
中国経済の成長潜在力についての問いに答えるには、中国経済の目下の発展段階を大きな歴史的背景に置いて考察する必要がある。
中国は、過去36年にわたる急速な経済成長を経て、世界第二の経済体に発展した。その経済規模は、世界第三の日本と比べても2倍近くに達している。だが中国の一人当たりGDPの発展水準が依然として、購買力平価換算で米国の20%にすぎないということを忘れてはならない。
日本の一人当たりGDPは第二次大戦後すぐに米国の20%に達した。台湾地区と韓国の一人当たりGDPはそれぞれ1970年代と80年代に米国の20%に達した。これらの経済体の成長率はこの後の5年から10年にわたっていずれも8%以上を維持した。中国経済も今後5年から10年にわたって8%近くもしくは8%以上の成長の潜在力を持っていると考えられる。この潜在力は、社会経済制度の改善によって引き出されるべきものである。
長期的に考えて、中国経済の発展には3つの大きな強みがある。第一に、中国経済は大国経済であり、巨大な国内市場を持っているため、国際市場への過度の依存の必要がない。第二に、中国経済は後発型・学習型の経済であり、先進国から絶えず新たなビジネスモデルや技術を学ぶことができる。第三に、中国経済は1980年代末の日本経済とは異なり、体制革新という原動力を持っている。