日本メディアの数カ月を隔てた2つのおわび声明は、ここ20年余りで日本世論の雰囲気に生じた大きな変化を反映している。1つは朝日新聞が今年8月5日、1990年代初めに掲載した日本の慰安婦強制連行に関する一連の報道を取り消し、木村伊量社長が9月11日に「誤った記事を掲載したこと、そしてその訂正が遅きに失したことについておわびいたします」としたこと。もう1つは読売新聞が11月末、同社発行の英字紙で「慰安婦」問題において「不適切な表現」を使用してきたことについておわびしたうえ、過去の記事で使用した「性奴隷」「強制」などの表現は外国通信社の記事を参考にしたもので、読売新聞の見解とは異なると主張したことだ。(文:賈秀東・本紙特約論説員、中国国際問題研究院特別招聘研究員。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
発行部数を見ると、朝日新聞と読売新聞は日本で一、二に数えられる大新聞だ。政治的立場を見ると、前者は左寄り、後者は右寄りだ。朝日新聞は慰安婦など歴史問題で右翼思想と異なる記事や論説を掲載するため、しばしば日本右翼メディアの集中攻撃の対象となる。また、靖国神社参拝などを問題視し、批判する社説を発表したために、安倍氏に抑圧され、朝日新聞の社是は「安倍政権打倒」なのではないかと追及された。歴史問題において割合客観的で公正な立場を堅持してきた朝日新聞が、20年以上前の慰安婦関連報道を取り消したうえおわびしたのは、世論の圧力と政治の集中攻撃を受けての受動的行動だ。一方、右翼的色彩の読売新聞によるおわび声明は、慰安婦問題において右翼の論調と同じ側についていることを一層顕示しようとしたものだ。
朝日新聞はおわびによって日本右翼の了解を得るどころか、反対にさらに激しい集中攻撃にさらされた。日本右翼およびその代表的メディアは朝日新聞のおわびに極めて興奮し、慰安婦問題否認の新たな突破口を見つけたと考え、朝日新聞を厳しく追及し、激しく叩いて放さず、これを利用して朝日新聞の生存空間をさらに圧迫しようとし、より重大なことに、慰安婦問題を認める世論をさらに弾圧し、慰安婦問題に対する国際社会の認識を覆し、日本における右傾史観の影響を拡大し、さらには日本の将来の発展の方向を左右しようとしている。安倍氏さえもこの機会を利用して朝日新聞集中攻撃に加わり、朝日新聞の慰安婦問題についての「誤報によって多くの人々が傷つき、悲しみ、苦しみ、怒りを覚え、日本の国際的イメージが傷ついた」と主張した。
朝日新聞の境遇は、ここ数年、日本国内で右翼勢力が次第に影響力を拡大していることをはっきりと示している。日本右翼は人数は多くないが、エネルギーはあり、ましてや安倍政権発足後は願いがかなったとばかりに、国会、政府、メディアなど各界で相互呼応し、意のままに操る形勢を強めている。安倍氏のする事なす事は、右翼勢力およびその影響への迎合であると同時に、右傾化の火に油を注ぐものでもある。典型的な例として、NHKに対する安倍氏のコントロールが挙げられる。安倍氏はNHK経営委員会改選時に、指名権によって志を同じくする者を送り込み、NHKの右傾化を後押しした。新経営陣は安倍氏の期待に背かず、慰安婦問題や南京大虐殺問題を公然と否認するなど、露骨な右傾発言を繰り返している。