世界の大国の間にはさまざまな矛盾がある。だが各国は現在の国際システムの恩恵を受け、その中で発展し、尊重を受けている。このシステムを「革命家」の視点で見るのでなければ、「敵か味方か」という対抗の思想で外交問題を扱う必要はない。(文:曲星・中国国際問題研究院院長、「環球時報」掲載)
大国間に矛盾がないと言うわけではない。間もなく過ぎ去ろうとしている今年も、ウクライナ危機が米ロ関係を新たな冷戦の縁へと追いやり、新たな冷戦の論理が生み出されているようにも見える。米ロ間では一部の人員の往来が制限され、政治関係が悪化し、経済制裁も行われ、軍事的にも対抗・抑止の布陣が進められ、新たな冷戦の兆候があちこちで現れている。欧州とロシアの関係も複雑さを極めている。東欧に対する欧米の政策はロシアにとって、ソ連時代の影響を取り戻せるかという問題ではなく、現在のロシアの国土をいかに維持するかという問題である。東欧に対するロシアの政策は欧州にとって、冷戦後の世界が保たれるかという問題である。過去にさかのぼって国境の策定をはかることをよしとするなら、欧州には平和などなくなるだろう。欧州と米国の関係も、欧州の同盟国の要人を米国が盗聴していたことが明らかになり、より複雑さを増すこととなった。欧州と米国は最も重要な同盟と言えるが、相互信頼を欠き、双方の矛盾は高まっている。
中国と米国・欧州・ロシアとの協力関係は全面的に深化している。習近平国家主席とオバマ大統領の会談は、新型の大国関係という理念を確かめるだけでなく、具体的な多くの協力の展開を含むものとなった。中国とロシアは相互の意思疎通を重ね、全面的戦略協力パートナーシップをさらに固めている。習主席は欧州を歴訪し、初めて訪れたEU本部では、平和・成長・改革・文明の4つの面で中国と欧州とのパートナーシップを構築し、全面的に関係を推進する方針を示した。中国と日本との関係は「わずかに暖かくなったがまだ寒い」ほどの状態を保っている。習主席は北京APEC首脳会議の期間中、要請に応じて安倍晋三首相と短時間の会談を行い、中日双方は4つの原則的共通認識を達成した。この共通認識には双方でそれぞれの解釈があるが、不測の事態の発生を防ぐためのメカニズムの構築などの措置を初めて確認した意義は大きい。