国家発展改革委員会はこのほど、60億8800万元(1元は約19.1円)の罰金と一連の業務改善規定をうち出して、国内外の市場で注目を集めた米半導体大手クアルコムの独占禁止法違反の案件に終止符を打った。14カ月に及び、中国の独占行為に対する罰金額の記録を塗り替えたこの案件では、主としてどこに重点があったのだろうか(文:梅新育・商務部研究院研究員。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
第1の重点は間違いなく、この案件が世界の携帯電話産業界および携帯電話の消費者のためにより公正でより持続可能な環境を創出したことにある。これらを成し遂げるために大事なことは、クアルコムの「特許のしばり」をなくすことだった。
クアルコムの事業モデルでは、長年にわたり、半導体チップを販売する際に完成品の端末の販売価格の一定の割合に相当する特許使用料を徴収することになっており、携帯電話のディスプレー、ケース、電池、カメラ、ヘッドフォンから、装飾用のストーンまで、すべてクアルコムのチップのために特許使用料を払わされていた。中国の3G携帯電話メーカーの利益の半分はクアルコムに特許使用料として支払わなければならず、もともと少なかった利益がますます少なくなっていた。さらには中国のコンピューター・通信設備・その他の電子設備製造業の一定規模以上の企業全体のコスト・費用の利益率は数年続けて全国の一定規模以上の工業企業(年売上高2000万元以上の企業)の利益率(7.11%)の7割に届かず、このため2つの3G規格(WCDMAとCDMA2000)の携帯端末の販売価格が200~300元も値上がりし、中国の製造業も消費者もマイナスを被った。クアルコムは中国で営業収入の49%を獲得し、利益率は60%に達していた。こうしたモデルの略奪的な傾向は明らかで、略奪の苦しみをなめてきた製造段階が携帯電話産業全体の持続可能な発展を支えることは無理だといえる。中国の経済電話生産台数は世界の81%を占め(13年のデータ)、「メードインチャイナ」の携帯端末が世界のほぼすべての市場をカバーした。西側諸国の多国籍大手もクアルコムのモデルを試そうと考え、極端に走ったクアルコムのモデルが世界の携帯電話産業の持続可能な発展に対する「特許のしばり」となっていた。
第2の重点は、クアルコムと市場が今回の決定に対して示した反応だ。巨額の罰金がクアルコムの当面の収益を悪化させることは間違いない。一連の業務改善措置は、クアルコムが今後必ずしもこれまでのような驚異的に高い収益率を維持できないということを意味している。だが資本市場の反応はクアルコムの株価の大幅な上昇というものだった。一方、クアルコム自身の反応は決定を受け入れるとともに、中国での投資規模の拡大を宣言するというものだった。こうした反応からわかることは、中国国内の販売市場、中国の巨大な産業規模が、中国に交渉をめぐる強い立場を与えているということだ。資本市場の参加者であれ、クアルコムの方針を決定する者であれ、中国のこうした力を認識しており、この強い力への対抗をやめた方が得策であることを認識している。