近頃、いくつかの有名外資企業が中国での生産から撤退し、他国あるいは本国に生産施設を移転している。これに伴い、中国は雇用と技術導入の機会を失っている。(文:沈丁立・復旦大学国際問題研究員副院長、教授。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
このような状況が生じている原因は、中国の人件費の上昇、環境保護関連の法執行の強化、技術導入に対する要求の厳格化、中国国内における代替技術の台頭など様々だ。もちろん、中国の生態の質が深刻な課題に直面しているのを受け、一部の外資企業が対応策を講じ始めた、という側面も排除できない。
では、こうした状況から、中国経済が悪化していると結論付けられるのだろうか?答えはノーだ。人件費の上昇を例にとると、中国人は過去30年余りにわたる経済成長の中、勤勉に働いて富を築きあげ、所得水準が徐々に向上した。これは中国の経済改革の目的であり、中国が経済グローバル化に積極的に関わってきたことの必然的な結果だ。中国の膨大な労働力と自然資源が、中国の改革開放時代に国際資本とうまく組み合わさったことにより、これまでの長期にわたるウィンウィンの関係が形成されてきた。
しかし、「膨大な労働力」をシンボルとする中国は、成長に伴いグローバル化に関わるようになり、新時代に入った。新たなシンボルとなったのは、「中国人のスキルの向上、中国の技術の台頭、中国資本の世界進出」だ。中国の新たな世代は、より良い学習のチャンスを得、より良いトレーニングを受けている。中国の創業者は今、より多くのハイテク分野を切り開いている。また、数兆ドル規模の中国の外貨準備が世界各地で価値上昇の機会をうかがっている。中国の資本は今や、国内投資だけにとどまらない。中国からの海外旅行者は年間1億人を突破し、中国はすでに世界第2の輸入市場になった。これら全ては、中国の近代化が重要な段階的成果をあげたことを物語っている。一部の外資企業が対中投資から撤退したのは、中国経済の悪化が原因なのではなく、グローバル経済一体化の必然の結果であり、むしろ中国の成功を反映しているところが大きい。国外の末端製造業の撤退は、特にそうだ。また、国外の先端製造業が帰国を選択したとしても、それはその国がたゆまぬ努力を通じ、国内と中国の製造コストの差を縮めた結果であり、祝福すべきことだ。