第12次五カ年計画国家科学技術支援計画プロジェクト「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)技術研究」に、重大な進展があった。研究開発に10数年を費やした、ホウ素中性子捕捉療法に特化した世界初の治療装置「医療用中性子照射器(IHNI)」がこのほど、中国大陸部で1人目の悪性黒色腫患者の臨床試験・治療に用いられ、予定されていた目標を達成した。科技日報が伝えた。
同装置は中国工程院の周永茂氏が開発を担当したもので、中国が独自の知的財産権を持ち、出願・取得した国家特許は計8件に上る。
周氏によると、ホウ素中性子捕捉療法は、中性子とホウ素との反応を利用し、腫瘍細胞を選択的に破壊する世界最先端の標的療法。高い標的性を持つホウ素を含む化合物を腫瘍にあらかじめ投与した上で、熱中性子線を照射すると、腫瘍細胞の内部でホウ素と熱中性子の増感効果が生じる。生まれた熱は約10ミクロンのがん細胞内でのみ力を発揮し、その遺伝構造を徹底的に破壊することで、修復不可とし死に至らしめる。同療法による悪性腫瘍の治療では、腫瘍組織を徹底的に除去すると同時に、患部周辺の正常な組織と機能を最大限に留めることで、患者の治療後の生活と寿命を大幅に改善できる。
IHNIは国際原子力機関(IAEA)によって「利用者にやさしく、核安全の特長を持つ」と評価されており、医師の判断によって使用可能だ。IHNI炉心材料は約20年間使用可能で、水・電力・ガスを供給する以外に特殊な操作の必要はない。この療法にかかる費用は、重イオン照射装置や大型加速器を下回る。(編集YF)
「人民網日本語版」2015年4月22日