人民元が国際通貨基金(IMF)の特別引出権(SDR)の構成通貨(通貨バスケット)に採用されたことによる振興作用は、長くは続かなかった。11月に思いがけなく下落した外貨準備データや変動が止まらない人民元相場のため、市場には悲観的なムードが再び漂ってきた。だが国家外匯管理局総合司の王允貴司長は10日の記者会見で、「外貨準備の適度な減少は容認される限度内のもの。人民元には長期的な値下がりの基盤は存在しない」と述べた。「北京商報」が伝えた。
中国人民銀行(中央銀行)が発表したデータをみると、11月の人民銀の外貨準備残高は3兆4383億8千万ドル(1ドルは約122.0円)で、前月末比872億2300万ドル減少し、11年以降で2番目の単月の減少幅となり、33カ月ぶりに記録を更新した。データが明らかになると、市場には「意外」の声が広がった。これについて王司長は、「外貨準備の減少は米ドル以外の通貨の資産の両替・換算による額面上の損失、また『1ベルト、1ロード』(シルクロード経済ベルト、21世紀海上シルクロード)政策の下での資金調達需要による外貨準備の減少、企業や機関がリスクを避けるために外貨を買って返済に充てるケースの増加などだ。外貨準備の適度な減少は容認される限度内のもので、楽観している」と述べた。
スタンダードチャータード銀行の丁爽エコノミストは、「人民銀は先月に外貨準備500億ドルを売却し、人民元の急速な値下がりを防ごうとした。米連邦準備制度理事会(FRB)の金利引き下げへの期待が高まり続ける中で、外貨準備が減少したもう一つの部分的原因は中央銀行以外の銀行の米ドル以外の資産の目減りに帰結することができる」と話す。
これまでずっと外貨準備データに連動して市場で予想が行われていた人民元レートは、8月11日に行われた人民元の切り下げ措置以降、過去最低記録の更新が続いている。昨日のオンショア人民元レートの始値は前日比0.07%安の1ドル6.4328元(1元は約18.9円)となり、5年ぶりの最低を更新した。オフショア人民元レートも変動が続き、1ドル6.50元台を割り込み、市場には様子見のムードがさらに広がった。一連の分析によると、人民元のSDRバスケット入り成功による好材料はすでに出尽くしており、人民元切り下げ圧力の上昇に向けた潜伏期を迎えることになるという。