中国科学技術大学化学・材料科学学院、エネルギー材料協力センターの曾暁成教授は、米国化学会(ACS)のジョゼフ・S・フランシスコ前会長の研究チームと協力し、硫酸水素アンモニウムの大気中における新たな形成メカニズムを発見した。この成果は米国化学会誌に掲載され、ACSの「Chemical & Engineering News」によって科学界の重要ニュースに選ばれた。科技日報が伝えた。
アンモニアと酸の反応によって生まれる、アンモニアイオンと酸イオンから構成されるイオン化合物のアンモニウム塩(硫酸水素アンモニウムの後続物の硫酸アンモニウムなど)は、PM2.5の重要な成分だ。これはPM2.5の当初の形成に対して、重要な力を発揮するという見方もある。
曾氏とフランシスコ氏の研究チームは、第一原理分子動力学を使った模擬試験で、アンモニアガスが三酸化硫黄と水の反応に直接参与することを初めて発見した。彼らは模擬試験の中で、アンモニアガス分子と三酸化硫黄分子が水クラスターの中で自発的に反応し、硫酸水素アンモニウムを形成する過程を直接観測した。アンモニアガス、三酸化硫黄、水クラスターは特殊な環状構造を形成する。この構造は水分子中の水素原子のアンモニアガス分子への転移を力強く促進し、アンモニアイオンを形成する。また水酸化物は三酸化硫黄分子と結合し、硫酸水素を形成する。
さらなる研究により、チームは反応ルートを確認し、三分子水クラスターにおける3つ目の水分子の存在が、環状構造の形成を促すことを発見した。この環状構造は反応エネルギー障壁(化学反応の過程において必要なエネルギー量。ハードルの高さのようなもの)をほぼゼロにすることで、硫酸水素アンモニウムの大気水クラスターにおける形成の速度を高める。チームはナノ水滴の表面からも、同様の反応メカニズムを観測した。
このエネルギー障壁をほぼゼロにする新型反応メカニズムの発見により、アンモニアガスが大気中の硫酸水素アンモニウムおよび硫酸アンモニウムの形成に直接参与し、その形成を加速することで、大気中の粒子状物質の形成に対して重要な力を発揮することが分かった。(編集YF)
「人民網日本語版」2016年2月22日