○「ゆとり世代」という言葉の誕生
1957年、旧ソ連が人類初の人工衛星を発射、欧州諸国に大きな震撼をもたらした。旧ソ連は、宇宙技術の発展で他国をリードする上でどのような優位性を備えていたのだろう?人々はその背景に、旧ソ連の難易度の高い数学教育があると考えた。そこで、欧州諸国は、ベクトルと行列の演算など難易度の高い知識を高校教育に導入することとした。数学は難しくなり、それに伴い理系の難易度もアップした。
その当時、日本も欧州諸国に倣い、高校数学の難易度を上げた。だが、ほどなくして、このような「詰め込み教育」に対して、社会から批判が寄せられるようになった。世界規模で猛烈な勢いで数学・物理学・化学各科目の難易度が上がる動きが起こると、日本社会は「このような教育方式は、ただテスト対応マシンを育てているだけで、人徳・知性・身体・審美すべてがバランスよく発展したクリエイティブな人材育成には何の役にも立っていないのではないか」と再考し始めた。
そして日本社会は、対極に向かうようになった。「負荷増加」の動きよりさらに凄まじい「負荷削減」が始まったのだ。1982年から2002年までの間に、「学習指導要綱」は3回にわたって改正された。このうち、2002年に中学校(2003年に高等学校)で実施が始まった3回目の「学習指導要綱」改訂では、主に以下のように改められた。
1 学習指導内容と授業時間を3割削減
2 「学校5日制」の完全実施
3 絶対評価制度を導入
4 「総合的な学習の時間」なる概念を新たに確立
いわゆる「ゆとり教育」とは、2002年に実施された3度目の改訂版「教育改革」を指す。前の2回の改訂と本質的に異なる点は、授業時間の削減と学校5日制の完全実施だ。授業時間の削減は、学習指導内容の削減を意味しているだけではなく、数学の計算トレーニングのための時間も大幅に削減された。
この改訂により、「ゆとり教育」を受けた学生の基礎知識が脆くなったと同時に、多くの暗記と何度も何度も繰り返す能力の向上はもはや期待できなくなった。これら2項目の改革によって被ったマイナス面は、数年経ってからだんだんと表面化し、ついには日本社会全体に「負担を減らす」ことに対する再考ムードが高まった。
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