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日本の「ゆとり教育」が中国の義務教育に劣る点 (2)

人民網日本語版 2016年06月14日08:27

○「ゆとり世代」という言葉の誕生

1957年、旧ソ連が人類初の人工衛星を発射、欧州諸国に大きな震撼をもたらした。旧ソ連は、宇宙技術の発展で他国をリードする上でどのような優位性を備えていたのだろう?人々はその背景に、旧ソ連の難易度の高い数学教育があると考えた。そこで、欧州諸国は、ベクトルと行列の演算など難易度の高い知識を高校教育に導入することとした。数学は難しくなり、それに伴い理系の難易度もアップした。

その当時、日本も欧州諸国に倣い、高校数学の難易度を上げた。だが、ほどなくして、このような「詰め込み教育」に対して、社会から批判が寄せられるようになった。世界規模で猛烈な勢いで数学・物理学・化学各科目の難易度が上がる動きが起こると、日本社会は「このような教育方式は、ただテスト対応マシンを育てているだけで、人徳・知性・身体・審美すべてがバランスよく発展したクリエイティブな人材育成には何の役にも立っていないのではないか」と再考し始めた。

そして日本社会は、対極に向かうようになった。「負荷増加」の動きよりさらに凄まじい「負荷削減」が始まったのだ。1982年から2002年までの間に、「学習指導要綱」は3回にわたって改正された。このうち、2002年に中学校(2003年に高等学校)で実施が始まった3回目の「学習指導要綱」改訂では、主に以下のように改められた。

1 学習指導内容と授業時間を3割削減

2 「学校5日制」の完全実施

3 絶対評価制度を導入

4 「総合的な学習の時間」なる概念を新たに確立

いわゆる「ゆとり教育」とは、2002年に実施された3度目の改訂版「教育改革」を指す。前の2回の改訂と本質的に異なる点は、授業時間の削減と学校5日制の完全実施だ。授業時間の削減は、学習指導内容の削減を意味しているだけではなく、数学の計算トレーニングのための時間も大幅に削減された。

この改訂により、「ゆとり教育」を受けた学生の基礎知識が脆くなったと同時に、多くの暗記と何度も何度も繰り返す能力の向上はもはや期待できなくなった。これら2項目の改革によって被ったマイナス面は、数年経ってからだんだんと表面化し、ついには日本社会全体に「負担を減らす」ことに対する再考ムードが高まった。


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コメント

最新コメント

空又 覚造   2016-06-2060.49.72.*
 この教育論文は秀逸である。おそらく博士号授与に値するだろう。特に「素質教育は重要ではあるが、学生の基礎知識を養うことが、義務教育段階の重点であるべきだ」という主張には賛成せざるを得ない。 しかし『義務教育段階における基礎知識とは何か?』ということが問題であったし,今日,問題である。それは帰国ばかりでなく,ドイツや美国でも同じである。 問題は,ゆとり教育の先進国であるドイツや美国で基礎学力が落ちている事実にもかかわらず,また反対が少なからずあったにも関わらず,日本でゆとり教育が導入されたことである。最近,日本の破廉恥文科省大臣は,ゆとり教育の失敗を初めて認め,公言した。 今また,小学校から英会話教育を強化し,大学での英米語での授業を必修化しようとしている。つまり,基礎教育とは何かを問わず,英米語会話を小学校から大学まで強化しようとしている。これは「ゆとり教育」ではないが,基礎教育を弱める働きをもっていると,言わざるを得ない。 日本の文化は,貴国の漢字を日本語文法の体系に取り入れ,発展させてきた。漢字を変形し,平仮名や片仮名を生み出した。また明治維新では漢語を駆使して西洋文明を取り入れることに成功した。 幸運にも植民地化されなかったため,英米語やフランス語やドイツ語を必要としなかった。かような日本語だけで十分にもかかわらず,文科省は英米語を義務教育段階にも導入しようとしている。つまりこれまでの日本文化を否定しようとしているのが,次期学習指導要領である。 もちろん,『日本文化』が最高だとして,世界が仰ぎ見る大東亜日本帝国の建設を夢みて,貴国を始め,南洋諸国を侵略し,多大な迷惑をかけた。日本の汚点である。 この汚点を論じれば政治的になるので,今回は論じないが,第三者からの目つまり,『日本文化』,日本語文法を見つめ直すために異国の言語を学ぶことは必要である。そのために英語をこれまで学んできた。また大学入試では英語,ドイツ語,フランス語から選択することができた。 明治の昔,井上馨文部卿は,「英語を学ぶ者は英風を慕い,フランス語を学ぶ者はフランス流をうらやむ」といって一辺倒を廃した。美国の言葉を学ぶことは美国の文化を愛することになりかねない。ひいては日米防衛の強化とつながざるを得ない。 またしても政治的になってしまったが,言語政策と政治は密接である。私なら,八方美人となり,貴国中国やロシア,台湾,韓半島の人々と気楽に話をしたい。そのために英米語だけを強制しない方がいいと考える。すなわち,義務教育段階における外国語教育は「基礎教育」とならない。 それよりも,漢字文化の恩恵を得るために,漢字教育に力を入れるべきと考える。幸い漢字を約2000字覚えれば,日常生活で不便を感じない。日本の戦前の教育はやたら漢語を濫用し,情緒的に訴える方法であった。ゆえに敗戦の時,国語改革が敗戦処理と同時に行われ,1968字に減らされたのである。 ところで康煕字典には40万字とか,60万字の漢字があるやに聞く。この中から現代生活に必要な漢字を選び出すことは容易ではないだろう。しかし漢字だけの文章であるから,日本のように2000字では済まないだろう。もっと多くならざるを得ない(不勉強で何字か知らなくて御免なさい)。 必須漢字の数をいくつにするか。旧字から簡体字にすることに抵抗もあったろうし,今でもあるだろうが,PISAでの上位成績をみれば,その数に妥当性が与えられるものと,推測できる(絶えざるカイゼンは必要であろう)。                                 基礎知識の重視という観点から,今回は漢字の数を取りあげたが,内容について一言付け加えさせていただければ,日本の高校では漢詩の授業数が大幅に減らされた。ゆとり世代に到っては,ほとんど読むことができない。選択制(自由意思)がとられ,知識の内容が軽視された結果(3割削減)である。 唐宋の詩文を知らない日本の学生がほとんどである。大学受験にかかわらず,『唐宋八大家文』などは基礎・必修内容であろう。 10年以上も前,台湾の故宮見学に行ったことがある。ガイド氏は米IBMに勤めた後,台湾の高校教師をなされた方であるが,一緒になった若い日本人女性に,『唐宋八大家文』をよんだことがありますか,と尋ねたのである。こたえは「否」ではなくて,「それって何?」という顔であった。         ゆとり教育とは,学習意欲・動機に重きを置く,デュ-イ型の学習法である。したがって「絶対評価の導入」というのは,いささか間違いである。数学にはあまり興味はないが,テストを受けたら評価Aに値する得点(80点から100点)をとった甲さんと,苦手だが一生懸命勉強したので評価B(79点)をとった乙さんがいたとしよう。この場合,乙さんは評価Aであり,学習意欲がない甲さんは評価Bである。つまり,意欲の得点が加算される「到達度評価」というのに近い。                     2012年のPISA数学リテラシーでは,台湾が第一位になった記憶がある。また上海という特別地区に対する批判もある。美国の数学教育教授らが第三者となって「公正に選抜されている」と,お墨付きを与えているが,いささか疑問の点があるにしても,上海には「優秀教員」なる方が複数おられ,数学教育の向上に貢献されていることがよく知られている。       また,中国本土からの留学生と時たまお会いすることがあるが,英会話が苦手のようである。おそらく貴国の英語教育は,読解力リテラシーに力を入れていることが窺える。日本人の知り合いの方も,彼ら・彼女らの英語で読み・書きする能力は高いと認めている。                   中文教育においても,日本語教育においても読み・書きに重点を置くのが正しい教育法である。日本のような英米語会話重視は,基礎知識軽視,一種のゆとり教育である,といわざるを得ない。