赤=読解力 緑=数学的リテラシ― 青=科学的リテラシ―
○日本が「ゆとり世代」に不満を抱く原因は?
問題が顕著に現れたのは、2003年のPISAの結果だった。経済協力開発機構(OECD)による国際的な生徒の学習到達度調査(英語:Programmer for International Student Assessment, PISA)は、2000年にスタート、15歳の生徒を対象に、3年に1度調査が行われている。PISAの実施目的は、教育方法と成果の改善にあり、現時点で、世界で最も影響力を備えている国際学生学習評価プロジェクトの一つとなっている。
PISAは主に、学生の読解力・数学的リテラシー・科学的リテラシーという3側面を考察するものであり、アジアのトップを行く先進国である日本は、豊かな教育資源を備えており、学生の素質も当然極めて高い。よってPISA第1回目には、日本の数学的リテラシ―は世界トップ、科学的リテラシ―は第2位だった。読解力については、順位はそれほど高くはなかったが、諸外国と大きな差がある訳ではなかった。
だた、2回目のPISA調査が行われた2003年になると、日本は、科学的リテラシ―が前回と同じ第2位だったが、残る2項目は大幅に順位を下げた。2003年に15歳になったのは、ちょうど1987年生まれの「ゆとり第一世代」だった。
2006年になると、結果はさらに首をかしげるものだった。科学的リテラシ―は前回の第2位から第6位に、数学的リテラシ―は第6位から第10位に、読解力は第14位から第15位に、軒並み後退した。この結果に日本社会全体が大騒ぎとなり、「ゆとり教育は失敗だった」との烙印を押された。
同時に、「ゆとり世界」が社会人となると、基礎知識の乏しさが産む社会的問題が噴出した。社会で「濃度」とは何かが分からない、四則計算の順序がよくわからない、あまりなじみのない漢字は全く知らない、といった人が続々と出てきた。彼らは、学校を中退した訳ではなく、高卒以上の学歴をもっており、大学生や大卒生も多かった。このような現象は、「ゆとり教育」実施前の昭和時代には想像できないことだった。
日本政府は急ぎさまざまな対応策を制定した。同時に、学校側も「学習指導要綱」の内容を上回る内容を教え始めた。ついに、2009年のPISA調査で日本が名誉挽回、各項目で順位を上げた。だがその順位も、日本が自慢する「アジアトップ」の地位に相応しいものとは言えなかった。
日本政府も新「学習指導要領」の制定に急ぎ着手、「ゆとり教育」の全面廃止に向けた話し合いが始まった。
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