「風の電話は心で話します。静かに目を閉じ、耳を澄ましてください。風の音がまた浪の音が、あるいは小鳥のさえずりが聞こえたなら、あなたの想いを伝えて下さい」。そんな「風の電話」とは、岩手県上閉伊郡大槌町にある電話ボックスのことで、電話線は繋がっておらず、東日本大震災で親しい人を亡くした被災者が、空にいるその人と、静かに対話をするための場所だ。
「風の電話」の考案者は、ガーデンデザイナーの佐々木格さん。震災直前に、従兄ともう一度話がしたいとの思いを込めて庭の隅に設置した。その後、東日本大震災が起こり、亡くなって会えなくなった被災者と想いを風に乗せて伝えられるようにと、佐々木さんはこの電話ボックスを一般開放した。電話ボックスの中の黒電話の横には、「風の電話は心で話します」と記されている。また、ノートも備えられ、訪れた人が思いをつづっている。電話ボックスの周りにはたくさんの花が植えられている。「どんなに見た目が強そうな人でも、心は弱いもの。亡くなった家族に心を開くことで、苦しみが少しでも和らげば」と佐々木さん。
一般開放後、多くの人が「風の電話」を訪れたという。最初に来た中年の女性は、受話器を持ったまま、涙を流し、しばらくしてから、「お母さん、どこにいるの?」と話し始めた。そして、「親孝行できずにごめんね。会いたいよ。絶対、見つけてお家に連れて帰るからね」と語った。別の女性は亡くなった夫に「あなた、安心して。今後は私が全力で娘を守るから」と語った。
このウェブサイトの著作権は人民日報社にあります。
掲載された記事、写真の無断転載を禁じます。
Tel:日本(03)3449-8257
Mail:japan@people.cn