「これは、箱詰めが終わって出荷待ちの車載用の電動パワーステアリング(EPS)」。そう語るのは、浙江省杭州市下沙高新技術産業開発区で、自動車の部品会社を経営している海外帰国組の王朝久さんだ。新華網が報じた。
王さんは、日本の自動車大手・ホンダで18年勤務した後、中国へ帰国し、電気自動車の部品を生産する会社を起こした。多くの留学帰国者と同じく、王さんも北京や上海、広州市(広東省)といった大都市を起業する場所に選ばなかった。近年、多くの海外帰国組が、起業の場所を二線都市や三線都市へ移して、ビジネスチャンスを狙っている。
■海外帰国組が二、三線都市に
杭州市を選んだ理由について、王さんは、「地方政府が大きなサポートをしてくれた。それに、浙江省は民営経済が発展しており、人件費も一線都市よりも低い」とし、2012年と13年に、政府機関が企業をサポートする政策「申報項目」を通して、政府から約200万元(約3368万円)の資金を援助してもらったという。
米国に留学し、現地で長年仕事に就いていた李迪さんは、帰国当初、会社を立ち上げる場所として北京や上海、山東省、江蘇省などを視察し、多くの地方の政府が長期的な目を持ち、着実にビジネスを展開する姿勢を重視していることに気付いたという。会社設立後、杭州市の「521グローバル人材計画」や高新技術産業開発区の海外のハイレベル人材を招聘してイノベーション、起業を推進する「5050計画」を通して多くの資金援助を得たという。
留学帰国者を呼び込もうと、中国の各省・市はさまざまな独自の政策を打ち出している。例えば、浙江省の「521グローバル人材計画」、温州市の「580海外エリート招聘計画」、江蘇市の「双創引才計画」、遼寧省大連市の「海創周」、湖北省武漢市の「黄鶴英才計画」などだ。
この点、中国・グローバル化研究センターの王輝耀・センター長は、「海外帰国組が二線都市や三線都市で起業している主な原因は、各地が急速な経済発展を遂げ、チャンスも多いほか、地方政府がさまざまな政策を打ち出して資金の面での援助を実施しているから。それに、北京や上海、広州市のように競争も激しくない。海外帰国組の中には、自分の実家がある街に戻り、人脈関係などのメリットをうまく利用しながら、故郷の発展に貢献している」と説明する。
英国サウサンプトン大学を卒業した呂夏軍さんは、実家のある浙江省紹興市に直接戻り、会社を立ち上げた。呂さんは、同市での起業は、北京や上海、広州市ほど競争が激しくなく、両親の資金援助や人脈などが起業の助けになったと感じている。