【第115回】労働契約の競業制限条項について (2)
実務上には、労働契約法第23条「企業が労働契約又は秘密保持協議には、競業制限条項、かつ労働契約が解除又は終了される場合、競業制限期間の補償金を毎月に支払うことを約定できる(下線は筆者により)」に基づき、競業制限そのものを定める同時に、補償金の支払基準にも規定する必要となり、さもなければ、競業制限条項が無効になり、つまり、補償金の支払基準を競業制限条項の発効要件と主張する考え方はよく見受けています。
しかし、「約定できる」とは、「約定しなければならない」のではなく、労働契約法第23条をみるかぎり、同時に補償金の支払基準を約定しない限り、競業制限条項が無効になるととっても言えません。補償金の支払基準は競業制限条項の発効要件ではなく、競業制限そのものにつき、企業が従業員と合意すれば、競業制限条項は直ちに発効になります。したがって、理論的には企業と従業員は競業制限条項を締結する同時に、補償金の支払基準につき約定できるし、従業員が離職直前又は離職後にも約定できると考えます。
勿論、企業にとって、最も有利な競業制限条項を従業員と締結するパターンは、まず、在職中の従業員と競業制限条項を締結し、離職直前に、当該従業員の競業制限コストを考慮したうえ、競業制限が必要ではないと考えれば、競業制限条項を解除し(事前、就業規定には解除できる権限を企業に付与する旨の規定を明確する必要がある)、必要となる場合、労働契約法第23条に基づき、毎月に支払う必要があると考えられます。
二 補償金の支払基準を約定していない競業制限条項が有効になっている以上、企業が競業制限の解除意思を離職従業員に明示しないという前提で、かつ従業員が競業制限の義務を履行したことを証明することができれば、従業員が当然競業制限期間の補償金の支払を企業に要求することができると考えます。
しかし、この場合、如何に補償金の支払基準を確定するべきなのか、明確な法定基準は定めていません。判例を見る限り、この場合に、補償金の支払基準につき、仲裁廷及び裁判所は独自に判定する傾向であります。